原発再稼働、司法は専門的判断を尊重せよ


 関西電力が大飯原発3号機(福井県おおい町)を再稼働させた。九州電力もあすにも玄海原発3号機(佐賀県玄海町)を再稼働させる。

 一方、一昨年8月に再稼働した四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)については、広島高裁が昨年12月、今年9月末までの運転差し止めを命じる決定を出すなど、原発をめぐる「司法リスク」も顕在化している。

 火山リスクで異なる判断

 大飯原発3号機の運転は2013年9月に定期検査で停止して以来、約4年半ぶり。新規制基準の審査に合格し、再稼働した原発は4原発6基目となる。関電は4号機を5月中旬に再稼働させ、電気料金の再値下げを行う方針だ。

 同じく再稼働が予定されている玄海原発3、4号機は、安全対策が不十分だとして佐賀、福岡などの住民らが再稼働の差し止めを求めていた。佐賀地裁は、新規制基準が「科学的合理的な基準として策定された」と判断し、住民側の申し立てを却下した。

 注目すべきは、住民側が約130㌔離れた阿蘇カルデラ(阿蘇山、熊本県)で巨大な噴火が起きる可能性が否定できないと訴えたことだ。佐賀地裁は「火山対策が合理性を欠き、具体的な危険が存在するとは認められない」と結論付けた。

 しかし阿蘇カルデラをめぐっては、広島高裁が玄海原発と同様に約130㌔離れた伊方原発3号機について「破局的噴火で火砕流が到達する可能性が十分小さいと言えない」と判断し、運転差し止めを命じている。同じ自然災害のリスクに関して異なる司法判断が下され、原発が運転停止に追い込まれる事態は大きな問題があると言わざるを得ない。

 最高裁は1992年10月に伊方原発訴訟で出した判決で、原子炉の安全性審査には専門技術的な総合的判断を要することなどから、裁判所が独自の立場から判断を下すことは不適切としている。

 2011年3月に発生した東京電力福島第1原発事故が、司法判断に大きな影響を与えていることは確かだ。だが事故後に世界で最も厳しいレベルとされる新規制基準が策定され、この基準に適合すると原子力規制委員会が認めた原発のみが再稼働している。司法は専門的判断を尊重すべきだ。

 政府は、電力を安定的に低コストで供給できる原発を「重要なベースロード電源」と位置付けている。いったん燃料を入れれば1年以上発電でき、使い終わった燃料を再処理して再び使用できることから「準国産エネルギー」ともされてきた。エネルギー安全保障の観点からも、原発の活用は欠かせない。

 不信感払拭し加速を

 20年以降の地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、日本は温室効果ガスを30年までに13年比26%削減する目標を表明している。目標達成のため、温室ガスを排出しない原発の存在は大きい。

 政府は電源構成に占める原発の比率を30年度に20~22%とする方針だ。国民の間に根強い不信感を払拭(ふっしょく)し、再稼働を加速させる必要がある。