世界日報 Web版

地域包括ケア、「家族支援」の視点を忘れずに


 4月に診療報酬と介護報酬が同時改定され、病院での入院中心から、地域の身近な「かかりつけ医」の機能を強化し、介護サービスと連携して「生活を支える医療」への転換を目指す。住み慣れた地域で暮らし続ける「地域包括ケアシステム」を一層推進するのが狙いだ。

 言うまでもなく、暮らしの基盤は家族だ。地域だけでなく「家族支援」の視点を忘れずに取り組みを進めてもらいたい。

在宅医療推進の報酬改定

 2025年には「団塊の世代」がすべて75歳以上となり、国民の3人に1人が65歳以上の超高齢社会を迎える。医療費は今の1・5倍、介護費は2・4倍に膨らみ、死亡者は約130万人から約150万人に増えると推計されている。今回の医療・介護の報酬改定はそうした「2025年問題」に対応するためのものだ。

 診療報酬の改定では、紹介状なしで大病院を受診した時の患者負担が拡大する一方、身近な開業医らのかかりつけ医の役割を重視し、「外来」にも「訪問」にも対応する医師の評価を引き上げる。例えば、かかりつけ医が複数の診療所と連携して患者に24時間対応できる態勢を整えれば、報酬を手厚くする。

 一方、介護では退院後の生活にスムーズに移行するため医療職との情報共有を緊密にした場合、報酬を増やす。リハビリ専門職と連携した機能訓練を行う介護事業所を評価し、高齢者の自立生活を支援する。重度の認知症の人を受け入れたり、嘱託医と連携して看取(みと)りに取り組んだりする特養(特別養護老人ホーム)への報酬も加算する。

 こうした取り組みは病院中心から在宅での医療・介護を推し進めるためだ。だが、在宅には大きな課題が残されている。家族支援が手薄なことだ。

 「国民生活基礎調査」(16年度)によると、在宅での介護の主な担い手は「親族」(同居・別居の家族など)が7割を占め、「事業者」は1割強にとどまる。親族の中でも「配偶者」が最も多く、介護度が上がるにつれ終日介護が必要となり、老々介護で行き詰まる。介護者が「子」の場合、「介護離職」を余儀なくされ、経済的に余裕がなくなるケースも少なくない。

 在宅が困難になって施設入所を望んでも、身近にある安価な特養は容易に入所できない。東京23区で最も高齢化率が高い北区では1000人近い人が待機している。有料施設は費用面から遠方にならざるを得ない。これでは住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けるという地域包括ケアシステムは絵空事に終わりかねない。

 独居の高齢者は、要介護度が比較的低い時期に自宅療養が困難になりやすい。ここでも家族や親族の関わりが問題になる。病院での手術などの医療同意は、本人が意思表示できなければ家族の同意が必要だ。施設入所でも費用や終末期医療をどうするのか、本人だけでなく家族との話し合いが欠かせない。

施策を論議する時だ

 患者・要介護者本人だけでなく、家族をどう支援するか。こうした施策を練らなければ、地域包括ケアは破綻しかねない。家族支援策を論議する時だ。