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札幌施設火災、これ以上悲劇を繰り返すな


 札幌市で生活困窮者らの自立支援関連施設から出火し、男女11人が死亡した。このような施設では、これまでも大規模な火災が相次いできた。生活困窮者の支援と安全対策の両立は簡単ではないが、これ以上悲劇を繰り返してはならない。

11人の入居者が死亡

 火災が起きたのは生活保護受給者らを支援する施設。入居者は40~80代の16人で高齢者が多く、足が不自由な人もいた。民間会社が運営しており、旅館だった建物を十数年前に改装。家賃は月3万6000円だった。

 各部屋には石油ストーブがあり、調理場や物置に灯油タンクが置かれていた。施設は築50年ほどで、老朽化に加え、ここ数日の気温低下で湿度が下がり、急激に火が回ったとみられる。

 火災報知器や消火器はあったが、スプリンクラーは設置していなかった。夜間は職員も不在だった。廊下を挟んで部屋が並ぶ「中廊下式」であったことも被害を広げた。

 60歳以上の入居者に食事などのサービスを提供する場合は有料老人ホームと認定され、スプリンクラー設置を義務付けられる場合もある。だが、この施設は民間の下宿やアパートと同じ扱いで設置義務はないという。とはいえ、多くの高齢者が住んでいる以上、防火対策が不十分だったと言わざるを得ない。

 札幌市は「無届けの有料老人ホーム」の疑いもあるとして、2016年8月から4度にわたって施設に調査票を送った。運営会社から回答はなかったが、提出は任意のため督促などはしなかったという。もっと踏み込んだ対応を取るべきではなかったか。

 こうした施設の大規模な火災は、これまでにもあった。群馬県渋川市の無届け高齢者施設では09年3月、入居者10人が死亡。13年2月には長崎市の認知症グループホームで5人が亡くなった。火災報知機やスプリンクラーが設置されていなかったことで、いずれも運営側が有罪判決を受けている。

 一方、無届けの施設が身寄りのない低所得高齢者の最後のよりどころとなっていることも事実だ。公費が投じられ、低所得でも入居できる特別養護老人ホームは、16年4月時点で約36万人の待機者がいる。

 届け出がされた有料老人ホームは利用料が高いことが多く、自治体などの紹介で無届け施設に入る高齢者は少なくない。こうした施設が借り上げるのは木造の古い物件が多い。防火対策もおろそかになりがちなため、火災の危険性も高い。

 厚生労働省の調査によれば、無届け有料老人ホームは16年時点で約1200カ所に上る。無届けの無料低額宿泊所も15年時点で1200カ所以上に達するという。

行政は実態把握を急げ

 こうした施設の運営は資金面で厳しい。だが、対策を強化しなければ悲劇は繰り返されよう。まずは国や自治体が実態把握を急ぐ必要がある。4月からは行政による改善指導に従わない悪質な施設に対し、自治体が事業停止命令を出せるようになる。低所得高齢者の受け皿を確保しつつ、施設の安全性向上に努めてほしい。