草津白根山噴火、今後も噴石などに警戒を


 群馬県の草津白根山の本白根山(2171㍍)が噴火し、同県草津町の草津国際スキー場で訓練中だった自衛隊員らに噴石が当たって男性隊員1人が死亡したほか、スキー客を含む11人が重軽傷を負った。

 噴火の前に活発な地震や噴気など前兆と考えられる活動は見られなかったという。

自衛隊員1人が死亡

 草津白根山は群馬県北西部の草津町と嬬恋村にまたがる活火山で、約3000年前から小規模な噴火を繰り返している。1980年代初頭には白根山(2160㍍)の湯釜周辺でマグマで熱せられた地下水が噴き出す「水蒸気爆発」が相次ぎ、83年11月には人の頭ほどある岩が火口から600~700㍍の範囲まで飛んだ。

 2014年に火山活動が活発化し、気象庁は5段階の噴火警戒レベルを、1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げたが、徐々に弱まったため、昨年6月に1に引き下げていた。今回の噴火を受け、3(入山規制)に引き上げられた。今後も噴火の可能性があり、噴石などに警戒する必要がある。

 草津国際スキー場では噴火当時、陸自第12旅団(群馬県榛東村)の第12ヘリコプター隊30人がスキー訓練を行っていた。噴石で隊員8人が負傷し、うち1人が死亡した。このほか、噴石でゴンドラの窓ガラスが割れてスキー客らがけがをした。

 噴火で死者が出たのは14年9月の御嶽山(長野・岐阜県境)噴火以来だ。水蒸気爆発は、マグマそのものが上昇し噴出するマグマ噴火に比べて規模は小さいとされるが、前兆現象を捉えにくい。御嶽山噴火も水蒸気爆発によるもので、登山者ら58人の死者を出した。

 ただ、気象庁が「噴火速報」を発表しなかったことには疑問が残る。噴火速報は、御嶽山噴火による災害を受け、15年8月から運用が開始された。全国で常時観測している47火山で噴火が発生した場合、約5分以内に山の名前と発生日時を簡潔に発表するものだ。

 今回の噴火発生の時刻には振幅の大きな火山性微動が観測されていた。その後、地元の火山の専門家から「噴煙が上がっている」という情報が寄せられたが、監視カメラの映像がなかったため確認できず、速報を出せなかった。

 噴火が発生したのは本白根山の鏡池付近だった。しかし、気象庁が観測態勢を整えていたのは2㌔ほど北側にある湯釜火口だったため、監視カメラは噴火を捉えられなかったという。

 結局、気象庁は噴火から約1時間後に「噴火が発生したもようだ」という情報を発表した。だが、映像できちんと確認できなくとも「噴火したとみられる」と判断した時点で速報を出すべきではなかったか。

防災への取り組み強化を

 御嶽山噴火以降も、全国各地で火山活動が活発化している。昨年10月には、宮崎・鹿児島両県境の霧島連山・新燃岳で噴火があった。

 火山周辺の自治体は今回の噴火を受け、避難計画などを確認して防災・減災への取り組みを一層強める必要がある。