尖閣沖に潜水艦、これで対中関係改善できるか


 沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域内に、中国海軍のフリゲート艦と潜水艦各1隻が入った。中国は尖閣の領有権を一方的に主張しており、こうした挑発行為は決して容認できない。

 潜航の確認は初めて

 尖閣接続水域で潜航した外国潜水艦が確認されたのは初めてのことだ。中国が尖閣をめぐって日本への圧力を強めているのであれば看過できない。

 軍艦や潜水艦は敵対的な行動を取らない限り、他国の領海や接続水域を航行することは国際法でも認められている。だが、尖閣奪取を狙う中国の行為は緊張を高めるものだ。

 中国は潜水艦を約60隻保有しているとみられており、「第3世代」の新型原子力潜水艦も既に製造段階に入っているとの情報もある。尖閣周辺の海域で今後、潜水艦の活動を活発化させる恐れもある。日本は対潜哨戒能力を高める必要がある。

 北朝鮮の核・ミサイル開発が加速する中、日本は北朝鮮に影響力を持つ中国との関係改善を模索している。菅義偉官房長官は「わが国の領土、領海、領空は断固として守りたい」と強調する一方、中国側の狙いについては「コメントは控えたい」と口をつぐんだ。

 北朝鮮問題をめぐって中国の協力を求めるのは当然である。しかし、性急に関係改善を目指すことが得策とは思えない。

 日中間には尖閣問題や東シナ海のガス田問題などの懸案がある。いずれも中国の真摯(しんし)な対応が求められるが、誠意ある姿勢は見られない。こうした状況で日本が過度に融和的になれば、中国に乗じられるだけだろう。

 中国外務省は、接続水域に進入したのは海上自衛隊の艦艇であり、中国海軍が「追尾・監視」を行ったなどと臆面もなく述べている。尖閣は日本固有の領土であり、到底容認できない。

 中国公船による尖閣周辺の領海侵入は昨年、29回に上った。2015年版防衛白書では「ルーティン化の傾向が見られており、運用要領などの基準が定まった可能性も考えられる」と分析している。日本の警戒感が弱まっているとすれば、それこそ中国の思うつぼだ。

 昨年秋の中国共産党大会で、習近平総書記(国家主席)の権力基盤が一層強化され、強国路線が鮮明になった。シルクロード経済圏構想「一帯一路」などで覇権主義的な動きを強めることが懸念されている。

 中国が北朝鮮問題の解決に、どれほど本気で取り組んでいるかも疑わしい。中国は北朝鮮の体制崩壊で米軍と直接対峙(たいじ)することを恐れている。国際社会の目が北朝鮮の核・ミサイル開発に注がれる結果、中国による南シナ海の軍事拠点化などへの注目度が相対的に低下し、中国にとって都合のいい面もあろう。

 強引な海洋進出牽制せよ

 日本は尖閣防衛に努めるとともに、一帯一路などによる中国の影響力拡大を警戒しなければならない。

 安倍晋三首相は昨年、トランプ米大統領と「自由で開かれたインド太平洋戦略」の推進を確認した。この地域に航行の自由や法の支配などの価値観を浸透させ、中国の強引な海洋進出を牽制(けんせい)すべきだ。