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北朝鮮船長起訴、漂着についても解明進めよ


 北海道松前町沖の無人島から発電機などが盗まれた事件で、函館地検は島に一時避難した北朝鮮船船長の自称カン・ミョンハク容疑者(45)を窃盗罪で起訴した。

 北朝鮮からとみられる木造船などの漂流・漂着が11月以降に相次ぎ、多くの国民が不安を抱いている。窃盗事件のほか、この問題についても解明が進むことを期待したい。

 無人島で発電機など盗む

 起訴状によると、カン容疑者は船員と共謀し、島にある宿舎や灯台から発電機や太陽光パネルなどを盗んだとされる。宿舎は鍵がこじ開けられ、家電製品やバイク、布団などもなくなっていた。被害額は約800万円に上る。

 この事件に関しては略式起訴による罰金刑という選択肢もあった。検察内では事態の複雑化を憂慮する声もあったというが、被害額の大きさなどを考慮。起訴の理由を「法と証拠に基づいて判断した」と説明した。政府も「法と証拠に基づき適切に対応する」(菅義偉官房長官)との姿勢を示しており、公開の法廷での審理で厳正に処罰することを求めたい。

 それとともに、船が日本に漂着した事情についても解明を進める必要がある。日本海側の各地では北朝鮮籍とみられる木造船の漂着が相次ぎ、11月には月間で過去最多の28件に上った。今年の合計は100件に達している。秋田県由利本荘市では先月、男性8人が保護され、市内の岸壁に漂着した木造船も見つかった。

 船の中で遺体が発見されるケースも少なくない。先月末に秋田県男鹿市に漂着した木造船では8人の遺体が見つかった。最近も山形県の鶴岡市と酒田市で、ばらばらの状態で漂着した木造船と計5人の遺体が発見されている。

 北朝鮮では金正恩朝鮮労働党委員長の指示で海産物の供給量を増やさなければならず、どれほど海が荒れていても出漁せざるを得ないという。金正恩政権が、いかに国民の生命や人権を軽んじているかを示す事例だと言えよう。

 日本海の排他的経済水域(EEZ)内の「大和堆」はイカの好漁場で、数年前から北朝鮮漁船の違法操業が増加。日本の沿岸に漂着した木造船は、台風が相次いだ10月下旬以降の荒天で流されたとみられる。

 一連の木造船漂着で、不審者侵入への警戒の必要性を指摘する意見もある。北朝鮮有事の際には、武装難民の船が押し寄せてくる可能性もある。

 沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国に関しては、偽装漁民らによる離島上陸など武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」の発生が懸念されている。しかし、対処が必要なのは中国だけではないということだ。

 海保の態勢強化も必要

 EEZで日本の権益を守ることも欠かせない。

 大和堆では海上保安庁の巡視船が退去警告や放水などを行って取り締まりに当たっているが、北朝鮮による違法操業が続くようであれば態勢強化も求められよう。