大飯原発、沸騰水型の再稼働も進めよ


 福井県の西川一誠知事は関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働に同意した。おおい町と県議会は既に同意しており、これで再稼働に必要な地元手続きは完了した。

 福井県の西川知事が同意

 西川知事は「総合的に勘案し、再稼働に同意する」と述べた。西川知事が新規制基準に適合した原発の再稼働に同意するのは2015年12月の関電高浜原発3、4号機(同県高浜町)に次いで2回目だ。

 関電は新規制基準に対応する安全対策工事を終え、9月には原子力規制委員会の審査が終了した。2基は現在、規制委が最終確認手続きの使用前検査を進めている。

 県が求める使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外建設については、関電の岩根茂樹社長が18年中に候補地を提示する考えを示している。関電の試算によると、使用済み燃料を青森県六ケ所村の再処理工場に搬出せず、関電保有の9基が再稼働すると7年程度で使用済み燃料プールが満杯になる。施設の建設地決定に向けた作業を急がなければならない。

 関電は再稼働によって年間約1100億円の収益改善効果を見込み、電気料金の値下げに踏み切る。企業や家計の負担が抑制されることを歓迎したい。もっとも当初は来年1月以降の再稼働が予定されていたが、神戸製鋼所の検査データの改竄(かいざん)問題を受け、設備の安全性を確認するために2カ月ほど遅れることになったのは残念だ。

 国内で再稼働にこぎ着けた原発は現在、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)、高浜原発3、4号機の5基。いずれも炉型は、事故を起こした東京電力福島第1原発とは異なる「加圧水型」だ。

 福島第1原発と同じ「沸騰水型」で、新規制基準に適合すると判断されたのは東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県柏崎市、刈羽村)だけだが、新潟県の米山隆一知事は再稼働に慎重な姿勢を示している。だが、30年度の最適な電源構成(ベストミックス)の目標として政府が設定した原発比率は20~22%だ。達成には30基程度の再稼働が必要とされており、今後は沸騰水型も動かすことが求められる。

 大飯3、4号機に関しては、福井地裁が14年5月、安全性が確保されていないとする周辺住民らの請求を認めて再稼働の差し止めを命じる判決を出した。関電は控訴し、名古屋高裁金沢支部で年度内にも判決が出る見通しだ。仮処分決定と異なり、判決は確定するまで差し止めの効力が生じない。

 裁判所は独自判断避けよ

 原発の専門家ではない裁判官が安全性について判断し、再稼働を止める決定を下すのは「司法の暴走」だと言われても仕方がない。最高裁は1992年、伊方原発訴訟で原子炉の安全性審査には専門技術的な総合的判断を要することなどから、裁判所が独自の立場から判断を下すことは不適切としている。

 大飯3、4号機は世界で最も厳しいとされる新規制基準に適合した。控訴審では、最高裁判例に沿った判決が出ること期待したい。