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SNS対策、社会全体で被害防ぐ知恵絞れ


 インターネット上の交流サイト(SNS)を通して、事件やトラブルに巻き込まれるケースが後を絶たない。神奈川県座間市で男女9人の遺体が発見された事件を受け、政府はツイッターの規制などを含む再発防止策を検討する。直ちに実施できる対策は、防止策のとりまとめを待たずに採用するという。

座間の事件で悪用される

 座間の事件では、容疑者がツイッターで自殺志願者の女性に「一緒に死のう」などと言葉巧みに近づき犯行に及んだとみられる。SNSの悪用による犯罪史上まれに見る残虐卑劣な事件となった。

 ネット上の「自殺サイト」に自殺志願者が集い、2005年に集団自殺が91人に及んだことを重く見て、警察庁がプロバイダー(接続業者)に働き掛け、自殺サイトは次々と閉鎖された。しかしそれ以降、志願者の書き込みはツイッターに移っていったとみられる。

 今回の事件を受けて開かれた関係閣僚会議では、自殺に関する不適切なサイトや書き込みへの対策強化が指示された。しかし、SNSの一律規制には疑問の声もある。自殺志願者の書き込みが救済のきっかけになることも少なくないからだ。

 政府は今年7月、「自殺総合対策大綱」の重点施策としてSNSを使った情報発信の強化を盛り込んだ。厚生労働省や自殺防止に取り組む民間団体は、SNSから相談サイトへの誘導に力を入れている。

 昨年の自殺者数は2万1897人で、そのうち20歳代以下の自殺者は2755人だった。全体の12%を占め、自殺者が7年連続で減少している中で、若者の減少率は低い。

 今回の事件では、SNSが若者たちに大きな影響力を持っていることが改めて明らかとなった。閣僚会議ではネットで自殺願望を発信する若者の心のケア対策の充実が指示された。悩める若者を救済するためにSNSの悪用を防ぐ一方、善用のために知恵を絞る必要がある。

 SNSは、顔や名前を知らない他者と簡単に交流できる。しかし、その匿名性に犯罪のリスクが潜んでいる。警察庁によると、今年上半期に交流サイトを通じて犯罪被害に遭った18歳未満は、過去最多の919人に上り、15~17歳が約7割を占めた。淫行や裸の画像を送信させられるケースが大半だが、重大犯罪に巻き込まれることもある。座間の事件では3人の高校生が犠牲となった。交流サイトがきっかけで殺人事件の被害者となった18歳未満の子供は、08年以降で5人に上る。

 日本は世界でも有数の治安の良さを誇る。島国の中で歴史的に形成された安全や人々への信頼を背景に、他人をあまり疑わない傾向がある。子供たちが言葉巧みに騙(だま)され、犯罪に巻き込まれる危険は、他の国よりも高いと言わなければならない。

家庭でも危険伝えたい

 警察庁の坂口正芳長官は「警察を含め関係機関・団体等が緊密に連携し、社会全体で対応していくものだ」としている。学校で、効果的な啓発、注意喚起を行うのはもちろん、家庭でも子供に日ごろからSNSに潜む危険を伝える努力が必要だ。