みちびき4基体制、利用の広がりが楽しみだ


 日本版GPS(全地球測位システム)の実現を目指す測位衛星「みちびき」4号機の打ち上げが成功した。これにより、国内ではGPSより誤差の少ないみちびきの電波を常時受信できるようになる。

 政府は来年度中に測位データの提供を開始する。新たな利用に向けた実証実験も始まっており、今後の官民含めた広がりが楽しみである。

 24時間受信が可能に

 みちびきは米国のGPSを補完する日本独自の測位衛星。GPSの測位情報を補正して誤差を約1㍍まで縮小するほか、国土地理院が全国に設置した電子基準点と連携し、最高で数㌢~数十㌢単位の精密測位を実現する。日本のほぼ真上(準天頂)を飛ぶ時間が長いため、ビルや山などに電波が遮られる「死角」を減らすことも可能である。

 みちびきは日本の真上にいる時間が約8時間。4号機打ち上げにより、国内では24時間、みちびきの電波を受信できるようになり(1基は静止軌道上)、来年4月からの測位データの本格提供に向けた体制が整った。

 みちびきが発する信号でセンチ単位の精密な測位が可能となり、これまでのGPSだけに頼る場合に比べて、クルマの自動運転などで精度が格段に向上する。現在使われているスマートフォンなどの位置情報サービスは、GPS使用のため、ビルの谷間や山間部などでは誤差が大きくなることがあるが、みちびきの専用受信機を使えば、数㌢の誤差で位置を確認できる。産業界の期待も高く、利用に向けたさまざまな実証実験が既に始まっている。

 例えば、重機やトラクターなどの精密な自動運転による建設工事や農作業の自動化、政府が2020年度の実用化を目指している無人運転バスなどの自動運転。また、現実の空間にコンピューター映像を重ね合わせる拡張現実(AR)と組み合わせた観光向けナビゲーションシステムなどもある。

 利用が広がっていくかどうかカギを握るのは、100万円を超える専用受信機(システム)の低価格化である。北海道大学が9月に行った自動運転トラクター走行の実証実験で受信機を提供した企業は、将来的には1万円以下の受信チップの開発を目指すとしており、進展を期待したい。

 政府は15年1月に策定した新たな「宇宙基本計画」に沿って、23年度中にGPSに依存せず、みちびきだけで測位情報が提供可能になる7基体制を実現する計画を進めている。

 衛星を利用した全地球測位システムには米国のGPSのほかに、ロシアの「GLONASS(グロナス)」、欧州の「Gallileo(ガリレオ)」、中国の「北斗」がある。主要国がこうした測位システムを構築するのは、経済的な利便性だけでなく国家の安全保障に不可欠だからである。インドは日本と同様、一部地域でのシステムを構築中である。

 地域の国々にも拡大を

 みちびきの信号は衛星の軌道上、日本と経度の近いアジア、オセアニア地域でも利用が可能で、これらの地域の国々にも利用拡大を積極的に進めたい。