柏崎刈羽「合格」、他の沸騰水型も円滑な審査を


 原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)が新規制基準に適合すると認め、事実上の合格証に当たる審査書案を了承した。

 東電の合格は初めて

 適合すると判断されたのは全国で7原発14基目。事故を起こした東電福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉が、適合するとされたのは初めてで、東電の原発でも初となった。沸騰水型では現在、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)や東北電力女川原発2号機(宮城県)などが審査中だ。停滞させることなく、円滑に進めてもらいたい。

 審査書案は、過酷事故で電源を失った際の炉心損傷を防ぐため、非常用冷却装置が作動しない場合は別ルートで注水するほか、消防車を利用するなど多様な注水手段を確保した。原子炉格納容器の破損防止では、放射性物質をフィルターで吸着させた上で容器内の圧力を逃す「フィルター付きベント」に加え、車載式の冷却装置などを組み合わせた「代替循環冷却系」を採用。外部に放出される放射性物質が少ないため、代替循環冷却系を優先して使うと定めた。

 規制委は重大事故を起こした東電に対し、通常の審査とは別に再び原発を運転する「適格性」を判断するという異例の対応を取った。東電が事故の再発防止を徹底するのは当然だが、「適格性」の法的根拠が曖昧なことが懸念される。

 東電ホールディングスは柏崎刈羽原発の再稼働を経営再建の柱と位置付けている。2基が稼働すると、火力発電所の燃料費低減など年1000億円程度の収益改善効果がある。

 ところが、新潟県の米山隆一知事は再稼働に慎重な姿勢を示している。米山氏は3~4年を見込む福島第1原発事故についての県独自の検証が終わるまで、再稼働の議論には入らないとしている。

 だが、柏崎刈羽原発6、7号機は世界で最も厳しいレベルの新規制基準をクリアしたのだ。米山氏の姿勢は専門的な判断を軽視するもので理解し難い。

 全国では現在、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、高浜原発3、4号機(福井県)の3原発5基が運転中だが、政府は2030年度の電源構成割合の目標を原発20~22%としている。達成には30基程度が稼働しなければならない。

 安倍政権は14年4月に決定したエネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を打ち出した。原発を活用するのであれば、新設や建て替えも求められる。

 福島の事故から約6年7カ月が経過したが、国民の間で原発への不安や不信感は根強い。だが、日本のエネルギー安全保障のために原発は不可欠だ。

 原発の必要性説明を

 また、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を踏まえ、日本は「50年までに温室効果ガス80%削減」の目標を立てている。この実現にも原発を活用しなければならない。政府は国民に原発の必要性について、従来以上に丁寧に説明すべきだ。衆院選でも各党は現実的なエネルギー政策を論じ合ってほしい。