対北制裁決議、厳格な履行で圧力強化を


 北朝鮮による6回目の核実験を受け、国連安全保障理事会は北への原油輸出に上限を設けるなどの制裁決議を採択した。北朝鮮の後ろ盾で制裁強化に慎重な中国、ロシアも賛成し、全会一致だった。北朝鮮への制裁決議は9回目だ。

 原油輸出が制裁対象に

 新たな決議で注目すべきは、北朝鮮への原油輸出が初めて制裁対象となったことだ。決議は、北朝鮮への原油の供給、販売、移転の年間上限量を過去12カ月の総量と決めた。

 ただし、現状の輸出量は維持される。当初の決議案には石油の全面禁輸が盛り込まれていたが、北朝鮮の不安定化を懸念する中露に配慮して米国が譲歩。金正恩朝鮮労働党委員長を渡航禁止や資産凍結の制裁対象とすることも見送られた。

 その意味では物足りない。ヘイリー米国連大使は決議採択後、北朝鮮に対して「危険な道を進み続けるなら、さらなる圧力をかけ続ける」と警告した。今後も北朝鮮が弾道ミサイル発射や核実験などの挑発行為を行うのであれば、次こそは石油の全面禁輸を決定すべきだ。

 制裁では、石油精製品の供給、販売、移転の年間上限量を200万バレルに設定。原油、石油精製品の北朝鮮への年間輸出量は計約850万バレルで、上限設定で30%削減を見込む。全国各地の工場や重油を利用する火力発電所、船舶、交通機関などが打撃を受けよう。

 このほか、コンデンセートと呼ばれる超軽質原油と天然ガス液(NGL)は全面禁輸とした。主要な外貨収入源である北朝鮮からの繊維製品の輸入禁止や、海外で働く北朝鮮労働者の受け入れを禁じることも盛り込まれ、制裁の対象が広げられた。繊維製品の輸出ができなくなれば、北朝鮮の輸出収入は約9割減ることになる。

 核実験からわずか8日後の早い採択は、北朝鮮の挑発を決して許さないという国際社会の強い意思を示す形となった。メキシコやペルーが北朝鮮大使を追放するなど、北への国際圧力は強まっている。北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威に直面している日米韓は、各国に決議の厳格な履行を呼び掛け、対北包囲網強化を急ぐ必要がある。

 制裁決議の実効性を確保する上で鍵となるのは、北朝鮮に大きな影響力を持つ中国とロシアの動向だ。米国は既に、北朝鮮と取引のある中露の企業などに独自制裁を科しており、こうした「第三国制裁」の拡大を示唆することで、中露に履行を迫っていくとみられる。

 中国は決議に賛同する一方、平和的な解決に向けた対話の必要性に改めて言及。ロシアも対話解決を主張した。だが対話の条件は、北朝鮮の「完全で検証可能かつ不可逆的な核放棄」であることを忘れてはならない。かつての6カ国協議が、北朝鮮の核開発を止められなかったことを思い起こす必要がある。

 挑発に万全の備えを

 北朝鮮は「極悪非道な挑発行為の産物」と制裁決議に強く反発。「全面的に排撃する」と主張し、核・ミサイル開発をさらに加速させる姿勢を示した。

 挑発に対する万全の備えが求められる。