福島原発凍土壁、汚染水発生を着実に抑えよ


 福島第1原発1~4号機の周囲の土壌を凍らせて地下水の流入量を減らす「凍土遮水壁」の未凍結区間での作業が行われている。

 完成すれば、以前は1日平均400㌧流入していた地下水は、100㌧未満まで減少する見通しだ。放射能汚染水の発生を着実に抑える必要がある。

 最後の1カ所の工事認可

 福島第1原発では、1~4号機の建屋に流入した雨水や地下水などが汚染水となり、廃炉作業の大きな妨げになっている。東京電力は昨年3月から、1~4号機の周囲約1・5㌔を囲むように多数の凍結管を地下30㍍まで埋め込み、土壌を凍結させる工事を進めてきた。

 原子力規制委員会は、土壌の凍結で地下水の水位が急速に下がると、建屋内から汚染水が流出するとして、周囲すべての凍結には慎重姿勢を示してきた。だが、これまでの部分凍結で想定より地下水の抑制効果が少ないことが判明し、最後の1カ所の凍結工事を認可した。

 保管用のタンクや建屋の汚染水は既に100万㌧を超えている。タンクは2016年度早期を目標に漏れにくい溶接型に切り替える予定だったが、汚染水の増加に建造が追い付かず、達成を2年以上先送りした。過去に大規模な漏洩(ろうえい)が起きた簡易型も使い続けている。凍土壁を完成させることで地下水の流入量を減らし、汚染水の増加を抑制しなければならない。

 保管されている汚染水の多くは、トリチウム以外の放射性物質濃度を下げる装置「ALPS」(アルプス)で処理されたものだ。資源エネルギー庁は、トリチウムを含む水の処分方法について、薄めて海に放出するのが最も期間が短く、費用も最も安いとしている。これは世界中の原発で実践されている方法でもある。

 地元漁協などは風評被害を懸念してこれまで海洋放出を認めない考えを示している。だが、地上での保管には限界がある。東電は適切な情報発信や地元の説得に努める必要がある。

 一方、福島第1原発の廃炉作業は工程の遅れが目立っている。3号機のプールにある使用済み核燃料の取り出し作業は、18年1月に始める予定だったが、今年1月に見直して「18年度の中頃」とした。プールには使用済み燃料が514体、未使用が52体残っている。1、2号機のプールにも多くの使用済み燃料がある。

 東電は今年7月、3号機の原子炉格納容器内を水中ロボットで調査した際、圧力容器の下部に溶融物が垂れて固まったような物体を確認した。炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)が含まれているとみられている。

 デブリの取り出しは廃炉に向けての最大の難関だが、この物体がデブリであることが確定すれば、取り出し方法を検討する上での基礎的な情報になる。

 一日も早い廃炉実現を

 廃炉に必要な研究開発や人材育成の拠点として、日本原子力研究開発機構の「国際共同研究棟」が今年4月、福島県富岡町に完成した。

 研究を進め、一日も早く廃炉を実現してほしい。