パートナー制度、結婚制度の崩壊につながる


 札幌市が6月から、同性愛者など、いわゆる「性的少数者」のカップルの関係を公認する「パートナーシップ制度」を導入している。

 もともとは4月に導入する予定だったが、市民から「同性婚」と同じではないかなどと批判の声が高まり、延期した経緯がある。住民の理解を得てスタートしたのではない。性愛についての首長の思想運動の側面が強いだけでなく、間違った風潮を広めかねない危険な制度だ。

行政が同性カップル公認

 また、行政による同性カップルの関係公認は男女の愛と同性愛を平等とすることだから、性モラルの乱れに拍車を掛け、男女に限定する婚姻制度の崩壊につながる恐れもある。これ以上他の自治体に広がらないよう、地方議会は首長による権限行使に監視の目を光らせてほしい。

 わが国でパートナーシップ制度が初めて導入されたのは2015年11月。東京都渋谷、世田谷の両区が同性カップルの関係を証明する文書を発行する制度を導入した。その後、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、那覇市と続いて、札幌市で6例目になる。政令指定都市としては札幌市が初めて。今後、導入を検討している自治体もある。

 渋谷区は条例を制定し、それに基づいた制度である。これに対して、その他の自治体は「要綱」による制度。これは市長の決裁で行える。その内容はそれぞれの自治体で微妙な違いがあるが、発行される書類に法的な拘束力がないのは同じ。

 例えば札幌市の場合、2人が宣誓書を提出し、市側が受領書を発行することで、その「関係」を公認する形を取る。同市男女共同参画課によると、12日までに制度を利用したのは8組。女性カップル5組、残りが男性カップルだ。

 一方、今月で導入から1年になる宝塚市では、証明書の交付件数はいまだにゼロで、住民の要請でスタートした制度でないことが浮き彫りになっている。

 どの自治体も性的少数者の関係、特に性愛についての住民の意識を変えることを制度の主眼にしているため、職員への研修会、民間企業に対する出前講座などを積極的に行っている。しかし研修内容は、男女の性差を否定する「ジェンダーフリー」の影響で偏向していたり、明らかに間違っていたりすることも多く、行政が行うことに疑念を持たざるを得ない。導入した区市の議会は、研修内容を厳しくチェックすべきである。

 パートナーシップ制度を導入する自治体がこれ以上増えて、異性愛と同性愛を同等に見る風潮が広がれば、婚姻制度の意義が薄れるのは必至である。結婚しない若者の増加が大きな社会問題となっているが、パートナーシップ制度はその風潮を煽(あお)り、少子化をさらに深刻にするのは間違いない。

結婚や育児の魅力伝えよ

 そんな社会情勢の中で、行政が行うべきことは、若者に婚姻制度の意義を正しく伝え、結婚して子供を産み育てることに魅力を感じるように啓発し、具体的な施策を進めることである。性愛についての価値判断は個人や家庭に委ね、行政の介入は控えるべきである。