森友学園問題、劇場型イメージ操作に陥るな


 衆参両院の予算委員会で、学校法人「森友学園」の籠池泰典氏の証人喚問が行われた。浮かび上がったことは、安倍晋三首相夫人の昭恵氏の国有地売却問題への関与や、現金の授受に関する“疑惑”が根拠の薄いものだということである。一方、籠池氏は自己の都合の悪い質問に対しては「刑事訴追の恐れ」があると連発し証言を避けた。

党利党略に走る野党

 そもそも問題の本質は、売却に政治家が関与していたのか否かにある。ところが野党側はセンセーショナルな質問に終始し、昭恵氏の証人喚問まで求めている。安倍政権に少しでもダメージを与えようとの党利党略だ。国会にそんな余裕はない。極東安保情勢が緊迫化する中でもあり、国会は緊張感を持って重要案件に取り組むべきだ。

 野党側が質問時間の多くを割いたのが、新聞やテレビのバラエティー番組が大きな関心を抱く昭恵氏に関することだった。

 籠池氏は、2015年9月に昭恵氏が学園の幼稚園で講演した際、密室で2人だけとなり100万円の寄付を受けたと語った。しかし、昭恵氏はこれを明確に否定している。講演の謝礼として10万円を渡したとも具体的に語ったが、これも昭恵氏は否定した。どちらも反証することは難しく双方の主張は真っ向から対立したままだ。

 野党は昭恵氏の証人喚問を求めているが、それは筋違いである。首相が語るように「刑事罰に関わることがないのに証人喚問に出ろとは、おかしな話」である。仮に寄付をしていたとしても、選挙区外であるため違法性を問われることはない。

 籠池発言で目立ったのは、虚言の多かった点だ。まず、「口止めとも取れるメールが届いた」と述べたが、公開された昭恵氏のメールの送受信記録に、そう取れるものはなかった。

 小学校新設の寄付金を募るため、「安倍晋三記念小学校」と印字した振込用紙を使用した期間について「首相に返り咲く前の一瞬だった」と言っていたが、その後も2~3年使用していたことが判明している。今後、偽証罪に問われる可能性がある。

 小学校開設への協力を依頼した国会議員として、自民党2人、日本維新の会1人の名前を挙げたが、全員が関与を否定した。昭恵氏付政府職員がファクスで「大変恐縮ながら現状では希望に添うことは出来ません」と籠池氏側に返答したことも「ゼロ回答だった」(菅義偉官房長官)ことの証左である。

 野党側は、9億6000万円の土地が8億3000万円値引きされて1億3000万円となったことを問題にしている。これに関しては、会計検査院が売却価格、手続きが適正だったかどうかの調査に着手し、数カ月後に結果がまとまる見通しだ。

 森友学園の提出した三つの建設契約書の金額が、国土交通省、大阪府、関西エアポートで大きく違うことも解明されるべき点である。

政治介入の有無が問題

 間違えてならないのは、政治的介入の有無が問われているのであり、劇場型のイメージ操作に陥ってはならない。政府・与党も、疑惑の解明には誠意をもって当たらねばならない。