日米韓の連携強化を急げ


 ティラーソン米国務長官はきょうから日本、韓国、中国を初めて訪問する。国務長官の各国初訪問は親善の意味合いが強いとも言えるが、今回は北朝鮮の核・ミサイル開発への対応が喫緊の課題となっている。日米韓の連携強化を急ぐべきだ。

 「戦略的忍耐」は失敗

 日本では安倍晋三首相や岸田文雄外相と会談する。防衛協力の強化に向け、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の早期開催を確認し、金正男氏殺害事件を受けた北朝鮮のテロ支援国再指定の検討など圧力強化も協議する見通しだ。

 トランプ米政権は、北朝鮮の核放棄の取り組みを待つオバマ前政権の「戦略的忍耐」を失敗と判断。軍事力行使や体制転換を含む「あらゆる選択肢」を検討している。軍事力行使の地ならしがティラーソン氏訪日の隠れた目的だとの指摘もある。

 北朝鮮が今月、日本海に撃ち込んだ弾道ミサイル4発のうち3発が秋田県・男鹿半島西方の日本の排他的経済水域(EEZ)、1発が石川県の能登半島沖約200㌔の日本海上に落下した。安倍首相とトランプ大統領は「脅威は新たな段階になっている」との認識で一致している。日米は緊密に連携し、抑止力を向上させる必要がある。

 ティラーソン氏は、韓国では黄教安大統領代行(首相)や尹炳世外相、中国では習近平国家主席、王毅外相と会談する。

 韓国では朴槿恵大統領が罷免され、大統領選候補者の支持率調査では最大野党「共に民主党」の文在寅前代表がトップだ。文氏は北朝鮮問題で「金正恩と会談する用意がある」などと発言。米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備の「先送り」も求めてきた。

 北朝鮮への圧力を強める国際社会から外れ、日米韓の足並みが乱れる恐れも出ている。ティラーソン氏はTHAADの早期配備を確認し、米韓同盟の重要性を改めて訴えるべきだ。

 中国訪問は4月上旬にも見込まれる習主席の訪米準備が最大の目的だ。それとともに、北朝鮮への圧力を高めるよう強く求めなければならない。

 王外相は北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、北に核・ミサイル開発を一時停止するよう要求する一方、米韓両国に軍事演習を一時停止するよう提案した。しかし、この二つを同列に扱うかのような考えはおかしい。北朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議に違反するものだ。安保理常任理事国の中国は、無条件で北朝鮮に発射中止を求めるべきだろう。

 中国は北朝鮮の最大の貿易相手国であり、北の体制崩壊につながりかねない強力な制裁には慎重な姿勢を崩そうとしない。だが北朝鮮の核・ミサイル開発を放置することは、地域の大国として極めて無責任だ。韓国へのTHAAD配備に強く反対しているのも理解し難い。

 「アジア重視」再構築を

 ティラーソン氏は、トランプ氏が唱える「力による平和」が外交の基軸であるとする考えを各国に伝え、オバマ前政権から引き継いだ「アジア重視」路線の再構築を探らねばならない。