文科省天下り、組織ぐるみの不正にあきれる


 文部科学省の組織的な天下りあっせん問題をめぐる調査結果の中間報告が公表され、政府の再就職等監視委員会が国家公務員法違反の疑いがあると指摘した28件のうち17件を新たに違法と認定した。組織ぐるみの不正にあきれる。

 新たに17件を違法と認定

 監視委は2013年以降の同省幹部の再就職について、人事課を介して早稲田大教授に就任した元高等教育局長の事例など10件を違法と認定。このほか、28件に違法の疑いがあるとして詳細な調査を求めていた。

 巨額の補助金や許認可の権限を握る国の省庁からの天下りが問題となるのは、官製談合や官民の癒着を招く恐れがあるためだ。08年12月に施行された改正国家公務員法は、再就職先を探す職員を他の職員があっせんすることや、利害関係のある企業や団体に求職活動をすることを禁じている。

 それにもかかわらず、これだけ多くの違法行為が行われていたことは言語道断だ。教育行政への不信を高めた文科省の責任は重い。

 今回の17件の多くには、文科省人事課OBの嶋貫和男氏が関与した。人事課によるあっせん作業の引き継ぎメモの存在も確認され、嶋貫氏と相談しながら再就職案を確定し、省内で意見調整するといった手順が示されていた。組織ぐるみの違法行為の「引き継ぎ」にはあきれるばかりだ。

 さらに嶋貫氏を学長予定者としていた大学の設置審査について、14年5月に担当職員や当時官房審議官だった中岡司文化庁次長が、学長予定者に関する是正意見が出ることを、審査に関係のない人事課職員に伝えていたことが判明。国家公務員法上の信用失墜行為に当たると認定された。

 当然のことながら、大学設置審査には公正さが求められる。外部の有識者らで組織する審査会での会議はすべて非公開で、不当な働き掛けを防ぐため、メンバーの大半も任期終了まで明らかにされない。

 中間報告は、設置審査が有利になるよう嶋貫氏が担当職員に不当に働き掛けた事実は確認できなかったとしている。だが重大な情報漏洩(ろうえい)であり、関係者の厳正な処罰と実効性ある再発防止策が求められる。

 一方、少子化の影響で大学の経営環境は厳しい。文科省は15年度、国立大学への運営費交付金約1兆1000億円、私立の大学・短大・高専に約3200億円の補助金を交付している。こうした国の予算は、大学側にとって非常に重要だ。

 今回の問題で、大学側には予算獲得のための情報やノウハウを持つ文科省OBへの期待があったとの見方もある。「違法とは知らなかった」では済まされない。今後は文科省OBの再就職に関して、慎重な対応が求められよう。

 調査でうみを出し切れ

 文科省は、改正国家公務員法が施行された08年末以降にさかのぼり、現役職員約3000人やOB約500人を対象に他の違反事例の有無を調査。3月末をめどに最終報告をまとめる。国民の厳しい視線を意識し、省内のうみを出し切るべきだ。