訪日外国人/目標達成へ官民連携強化を


 昨年の訪日外国人の数は、2403万9000人だった。当初、政府が掲げていた目標は、2020年までに年間2000万人だった。それを4年早く、しかも400万人多く達成したことになる。

昨年は2400万人

 しかしこれは、観光立国・観光大国を目指すわが国としては、あくまで「通過点」である。政府は昨年3月、2000万人を超える見通しが立ったことを受け、20年までの目標を一挙に4000万人にまで引き上げている。

 訪日客は、政府や民間の予測を超えるスピードで増加している。そのため受け入れ態勢がそれに追い付いているとは言えず、例えば都内の観光案内所で外国人の列ができたりもしている。官民連携して整備を急ぐ必要がある。

 観光名所や施設への道案内の掲示や表示の英語表記なども進んでいない。わが国は、規制が緩いため、民間の広告や店の看板が街には溢(あふ)れており、公的な施設の案内がその中で埋もれがちだ。

 外国人にも分かりやすい案内板の整備が求められる。また、スマートフォンを利用して行動する訪日客にとって、無線通信Wi-Fi環境の充実は必須要件になっている。

 それとともに急がれるのが、宿泊施設の不足の解消である。20年に訪日客が4000万人に達した場合、東京都内で1800万人分の宿泊施設が足りなくなるとの試算もある。また、海外の富裕層が泊まる高級ホテルが十分にあるとは言えない。さまざまな層に対応する宿泊施設の整備が急務だ。

 4000万人達成のためには、地方への誘客とリピーターを増やすことが鍵となる。東京、名古屋、京都、大阪を結ぶ「ゴールデンルート」以外にも、日本には魅力的な観光地が全国各地にある。

 地方の小京都と呼ばれるような都市は、ただ単に古い町並みが残っているというだけでなく、独特の地方色を持つ。温泉や料理などゴールデンルートにはない観光資源も備えている。問題は、その魅力をいかに海外へ発信し、交通アクセスを含めた受け入れ態勢を整えるかだ。

 地方への誘客は、地方創生の切り札の一つだ。古き良き日本の温泉街の風情を残しながら、誘客に苦心してきた兵庫県の城崎温泉は、今や年間3万4000人近い訪日客が訪れ、浴衣に下駄を履いた外国人が、外湯めぐりをする光景が見られるようになっている。

 訪日客の訪問先や関心、嗜好(しこう)はさまざまだ。リピーター獲得のためには、その多様さにきめ細かく対応していくことが求められよう。

イスラムの戒律に対応を

 訪日客は、中国、韓国、台湾からが多いが、アジアの他の新興国からも増えている。その中にはインドネシアやマレーシアなどイスラム教徒が大多数の国がある。

 モスレムの訪日はさらに増えていくだろう。モスレムには、豚肉を食べないなどの戒律がある。彼らが安心して食事ができるハラル認証の店を増やすことも急がれる。