憲法論議、今年こそ改正に道筋付けよ


 大激変の年、歴史的な転換期。年頭に当たって多くの識者が今年をそう特徴付けている。世界では米主導の国際秩序が揺らぎ、国内では人口減社会が到来した。内外から国の在り方が問われている。現行憲法が制定されて70年、時代変化に憲法は耐えられそうにない。今年こそ、改正に道筋を付けるべきだ。

 平和貢献へ自衛隊明記を

 まず世界を見てみよう。多極化する国際社会では国益と国益が真正面から衝突しかねない。平和を維持するには、これまで以上に「国際法の順守」を求めねばならない。国際法は先人が積み重ねた平和のツールだ。

 例えば、国連憲章は加盟国が国連軍などで平和を守る「集団安全保障」と、加盟国が自ら、あるいは同盟で平和を維持する「個別的・集団的自衛権行使」の二つの方策を明示する。

 前者は理想だが、現実的には信頼性がないとして後者の「自衛権」を認めた。いずれも軍の保有を前提とし、国連平和維持活動(PKO)の武器使用についても「国連標準」を示す。

 こうした国際法に則(のっと)って平和を守るには憲法9条を改める必要がある。少なくとも「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」(2項)を改正し、自衛隊の存在を条文に明記すべきだ。中国や北朝鮮が平和を脅かす今日、喫緊の課題のはずだ。

 国内はどうか。昨年、熊本地震で大きな被害が出たが、南海トラフ地震や首都直下地震など大地震はいつ、どこで起こっても不思議でない。気候変動に伴い風水害も大規模化している。

 これには迅速な救援、復興活動が不可欠だ。時には個人の権利を一時的に制限する場面も出てこよう。だが、憲法に緊急事態条項が存在しない。万全の体制づくりに齟齬(そご)を来す。

 人口減社会は社会保障を脅かす。地方の過疎化に拍車が掛かり国土保全も危うい。危機超克へ人々の「紡ぎ直し」が求められる。とりわけ「家族の絆」を取り戻さねば、幸福な社会を築けない。家庭があってこそ、個人の尊厳が守られるからだ。

 ところが、憲法に家族条項がない。自民党は憲法改正草案に家族条項を盛り込んだが、一部メディアや野党から「復古調」「公権力が家庭に介入するな」といった批判を受けている。

 筋違いな批判だ。世界人権宣言は、家庭は社会や国の保護を受ける権利を有するとし、ドイツ基本法(憲法)も家族保護を国の責務としている。

 また衆参両院の役割分担が曖昧なため「ねじれ国会」で国政が停滞したり、地方自治の本旨が不明確で地方分権が進まなかったり、制度上の欠陥が多々指摘されている。

 昨年の参院選の結果、改憲勢力が衆参両院で発議に必要な3分の2超の議席を得た。国民は本格的な改憲論議を望んでいる。ところが、先の臨時国会で憲法審査会が開催されたのは衆院で2日、参院で1日だけだった。

 政治の不作為を続けるな

 これでは内外の激変に備えられず、危機に瀕(ひん)しかねない。国家の土台づくりに党利党略を持ち込むべきではない。いつまで政治の不作為を続けるつもりなのか。今年こそ、改憲へ確かな一歩を踏み出すべきだ。