16年の日本、政治の安定が存在感高めた


 1年のニュースを振り返り今年の日本を総括する時、改めて政治の安定が、内外から押し寄せるさまざまな困難を克服し、未来に明るい展望を拓(ひら)く力であることを痛感させられる。参院選で、その冷静な選択をしたのは国民であり、安倍晋三政権の積極的平和外交の展開が世界の中の日本の存在感を高めたと言えよう。世界日報の選んだ「今年の10大ニュース・国内」(30日付)のポイントである。

参院で改憲派3分の2超

 「天皇陛下、退位の御意向表明」(1位)は、陛下が異例のビデオメッセージで、御高齢となられたことから「象徴としてのお務め」についてのお考えを表明し、退位の御意向を強く示唆された。政府の有識者会議は退位の制度化は困難との認識で一致。政府は一代限りの特例法で退位を認める方向で検討しているが、皇室の将来像を見据えた上で冷静な議論が求められる。

 自民・公明与党の安倍政権「参院選で大勝、改憲派3分の2超」(2位)は、両党の70議席獲得に加え、当時のおおさか維新や非改選議員らを合わせ、憲法改正に前向きな勢力が改憲発議に必要な参院の3分の2(162)を超えたことである。すでに衆院は3分の2超えしており、改憲環境が整ってきた一方で、安定政権を力にした安倍首相の積極的平和外交も前進した。

 「オバマ米大統領が広島訪問、安倍首相は真珠湾で慰霊」(6位)は、かつて戦火を交えた日米両国の和解と同盟の深化を世界に発信した。また広島の犠牲者追悼で「核兵器のない世界」を目指す理想を見失わない姿勢を示したことの意味は小さくない。

 安倍首相は米大統領選後、最初にトランプ氏に会った主要国首脳として世界の注目を浴びたが、引き続き日米同盟関係の維持と深化を進めることが重要である。一方でロシアのプーチン大統領が11年ぶりに訪日し、山口・長門市などで行った今年4回目の日露首脳会談で「日露、北方四島で共同経済活動へ」(10位)合意した。難題は多く、具体的なことはこれからだが、1歩ずつ前進を重ねていくのを慎重に見守りたい。

 列島を襲った気象・自然災害が相次いだのも今年の特徴である。4月に熊本で震度7を2度観測した地震では、直接の死者だけで50人に上った(5位)。台風や豪雨の被害も相次ぎ、特に台風10号の雨では岩手県の高齢者ホームで9人が亡くなった。首都直下地震など巨大地震発生の可能性が言われる今、阪神や東日本大震災などの教訓を防災や減災に生かしたい。

五輪で史上最多のメダル

 今年は明るいニュースにも彩られた。南米初開催のリオデジャネイロ五輪で日本は、史上最多のメダル41個(金12、銀8、銅21)を獲得する大健闘で列島を沸かせた(3位)。細胞の「オートファジー(自食作用)」の仕組みを解明した大隅良典・東工大栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞(4位)、北海道新幹線が開業(9位)、国立西洋美術館など世界遺産登録相次ぐ(番外)などだが、イチロー選手の大リーグ3000安打超え、理化学研究所が合成に成功した原子番号113番元素「ニホニウム」命名なども印象深い。