高齢運転者事故、運動能力の低下自覚したい


 高齢運転者による交通事故が多発している。高齢になれば、運動能力や判断力の低下は避けられない。このことを強く自覚する必要がある。

 改正法で認知症検査強化

 高齢者が運転する車の事故が相次いでいる。先月28日には横浜市港南区で軽トラックが小学生の列に突っ込み、小学1年の男児が死亡、トラックを運転していた87歳の男を含む7人が負傷した。逮捕された男は、認知症の疑いがあるとされる。

 今月に入ってからも栃木県下野市や東京都立川市などで80歳代の運転者による交通死亡事故があった。65歳以上の運転免許保有者が10年間で約1・7倍に急増したこともあって、高齢運転者による事故の割合は増大している。

 警察庁の調査によると、全国の高速道路で昨年に起きた75歳以上の運転者による逆走122件のうち、63・1%が運転免許更新時の検査で認知症や認知機能低下の恐れがあると判定されていた。

 来年3月に施行される改正道路交通法では、75歳以上の運転者に一定の違反があった段階で臨時の検査を実施。この検査や免許更新時に「認知症の恐れがある」とされた人には診断が義務付けられる。認知症のため、免許取り消しとなる高齢者は大幅に増えると見込まれている。

 ただし、免許更新は3年に1度だ。認知症となった運転者を見逃さないためには、高齢者の検査をもっと頻繁に行うことも求められよう。

 また認知症でなくても、高齢になれば運動能力や判断力は低下する。衰えを感じるのであれば免許の自主返納も考えたい。返納者に交付される「運転経歴証明書」を示せば、バスやタクシーの運賃が割り引きされるほか、飲食店などで特典を受けることもできる。

 もっとも昨年の75歳以上の免許保有者約480万人のうち、返納者は約12万4000人にとどまった。自治体や警察などは、自主返納を促す取り組みを強化する必要がある。

 高齢者の中には、運転を「自立や若さを示すもの」と考える人も少なくない。運転をやめるように家族が求め、いさかいになるケースもある。

 こうした気持ちは分からなくもない。だが、仮に事故を起こせば悔やんでも悔やみきれないだろう。高齢者は自身の能力を過信しないことが肝要だ。

 もう一つ、高齢者が免許返納をためらう理由として挙げられるのは、特に地方では公共交通機関が衰退しているため、車がないと困るということだ。代替の移動手段を確保することが欠かせない。

 自動運転の実用化を

 長期的には、自動運転の技術開発も課題となろう。国土交通省は少子高齢化が進む中山間地域で、自動運転サービスの実証実験を始める方針だ。

 食料品店や診療所、行政窓口などの機能が集積している休憩施設「道の駅」に、自動運転車の専用ステーションを整備。利用者はスマートフォンなどで車を自宅近くまで呼び出して道の駅へ移動し、用事を済ませて再び車で帰るというものだ。早期の実用化を目指したい。