地方交通網、「住民の足」確保する将来像を


 経営が悪化しているJR北海道は、単独での路線維持が困難な赤字の10路線13区間を公表した。対象は、全路線の約半分に相当する約1237㌔に上る。うち3区間は廃止を前提とし、8区間は路線維持の費用について沿線の自治体と協議する。

JR北に維持困難な区間

 道内の路線は札幌市周辺の一部区間を除き、ほぼ全線が赤字で、中でも今回の13区間は特に利用者が少ない。このうち100円を売り上げるのに1854円の経費がかかる根室線の富良野-新得間(81・7㌔)など、1日1㌔当たりの利用者数を示す輸送密度が200人未満の3区間は廃止を前提とする。

 JR北海道は2017年3月期は18期連続の営業赤字となり、赤字幅は過去最大の440億円に拡大する見通しだ。赤字を穴埋めする「経営安定基金」の運用益も減少し、経営状態が悪化している。

 こうした状況下では、確かに廃止は仕方がない。しかし鉄道は公共交通機関であり、路線をなくすのであれば、地域住民のためにバスなどの代替手段を確保する必要がある。

 また他の8区間については、自治体が線路などの施設を一部保有し、維持管理を担う「上下分離方式」の導入も含め、自治体の協力を求める考えだ。ただ自治体も財政難であり、負担を求める以上、JR北海道の一層の経営努力が欠かせない。

 経営悪化は人口減少や自動車利用への転換が進んだことが大きい。道内人口は15年までの25年で5%減少し、札幌市周辺以外の地域は17%減となった。1987年のJR発足時に計167㌔だった道内の高規格道路は約1100㌔に達している。

 もっともJR北海道の場合、労働組合の強い影響力もあって安全軽視の体質があったことも見逃せない。2011年の石勝線トンネル内での脱線炎上事故では乗客の避難誘導が問題視されたが、再発防止に取り組んだ当時の社長は、労使交渉に疲れ果てて自殺した。

 さらに、13年にはレール異常放置と検査データ改竄問題が発覚した。これらが利用客の鉄道離れを招いたことは否定できない。経営立て直しに向け、安全第一を徹底するのは当然のことである。

 全国的に地方の鉄道は厳しい状況に置かれている。国土交通省の集計では00年度以降、38路線754・4㌔が廃止された。中小民営鉄道などの「地域鉄道」は96あるが、昨年度は71事業者が赤字だった。

 もっとも、施設保有経費を除けば大半は黒字化するという。上下分離方式を導入する自治体に国が補助金を出し、地域鉄道の存続につなげることも一案だろう。

 JR北海道が2年前に廃止した江差線の支線では、代替バスが1日6往復走る。列車と同じ本数だ。10駅の区間には停留所を22カ所設置し、かえって便利になったとも言われる。

政府は必要な支援を

 政府は「住民の足」を守るとともに地域活性化にもつながる地方交通網の将来像を示すことが求められる。住民の意向にも十分配慮し、必要な支援を惜しむべきではない。