日韓防衛協定、対北抑止力アップに期待


 日韓両政府は安全保障上の機密情報を相互に共有・保護するため軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結した。核開発や弾道ミサイル発射などで高まる北朝鮮の軍事的脅威への備えとして極めて有効であり、締結を歓迎する。

 韓国政府に強い意欲

 日韓はGSOMIA締結で、これまで米国を介して得ていた相手国の北朝鮮軍事情報を直接やりとりすることができるようになる。より詳細な情報の迅速な共有は対北抑止力アップにつながるものとして期待される。

 GSOMIAには交換する機密のランクや提供方法、保安上の原則、閲覧者の範囲、廃棄の方法、紛失防止策、紛争解決の取り決めなどについて定められている。

 日本は韓国のヒューミント(人を介した諜報〈ちょうほう〉活動)による各種の情報を、また韓国は日本側が把握している衛星情報や戦術データなどをそれぞれ得られるようになる。

 4年前、当時の韓国・李明博政権も日本とのGSOMIA締結を推進したが、署名式直前で韓国側が国内の反日世論に押し戻される格好で延期を申し入れ、実現しなかった。韓国国民の間には日本と防衛面で協力することに根強い抵抗感がある。

 だが、今回は韓国が協議再開の意向を表明してからわずか1カ月もたたないうちに締結までこぎつけた。韓国政府の強い意欲が感じられる。

 北朝鮮は今年、2度の核実験を強行し、各種の弾道ミサイルを多数発射した。中には失敗と思われる例もあるが、データ収集などを通じて核の小型化・軽量化、ミサイルの射程延長や命中率向上のための技術水準は確実に高まっているとみられる。

 日韓は共にこれらを重大な脅威と認識しており、それぞれがミサイル防衛(MD)を強化すると同時に情報面で直(じか)に連携することは焦眉の急だった。

 現在、朴槿恵大統領は国政介入疑惑で国民の信頼を失墜させている。朴大統領批判の大半が疑惑関連に集中している状況が、逆に日本とのGSOMIA締結にとって都合が良かったという側面もある。

 ただ、反対世論を十分に説得したとは言えず、野党を中心にGSOMIAへの批判も続いている。今後、国民に理解を求める努力は不可欠だろう。

 一つ気掛かりなのは最近、韓国が中国にGSOMIA締結を提案したことだ。北朝鮮と地理的に近く、高官同士の交流もある中国からの情報は有益だろうが、中国が韓国の国益に沿う形で情報を提供してくれるのか疑問だ。

 中国への漏洩(ろうえい)を心配し、日本が韓国への情報提供に慎重になる可能性もないとは言えない。韓国は北東アジアの安全保障で利害がぶつかる米国と中国、あるいは日本と中国との間に入った均衡外交路線が危険を伴うものであるとどこまで認識しているのか不安だ。

 トランプ氏も念頭に

 次期米大統領に当選したトランプ氏が北朝鮮や中国の脅威と関連し、日韓にどのような連携を望んでいるのか明確ではない。その意味でも日韓が防衛協力を深める意義は大きい。