トランプ氏と北、瀬戸際外交に翻弄されるな


 米国の次期大統領に当選したドナルド・トランプ氏が政権移行に向け活動を開始した。日本としては環太平洋連携協定(TPP)の行方と共に北東アジアの安全保障政策でどのような舵取りをするのか気にかかるところだ。特に核・ミサイル開発で暴走を続ける北朝鮮をめぐる問題は、そのアプローチ次第で日本にも大きな影響を与える。

米韓同盟強化に同意

 トランプ氏は選挙期間中、メディアのインタビューで北朝鮮の最高指導者・金正恩委員長との首脳会談に意欲を示したことがある。北朝鮮との対話には核放棄を前提とするオバマ政権の方針とは明らかに一線を画す姿勢として注目を集めた。

 だが、当選後のトランプ氏の言動を見ると、オバマ政権の政策や既存路線を否定するような過激な発言は影を潜めている。対韓半島政策でも、まずは米韓同盟の強化に全面的に同意するなど、北朝鮮の脅威に断固たる姿勢で臨む可能性を示唆した。

 以前は韓国駐留の米軍について韓国側にさらなる経費負担を求めたり、韓国の核武装を容認したりする主張も見られたが、当選後の朴槿恵大統領との電話会談では「米国は韓国を守るための防衛態勢を維持する」と述べた。本心であれば北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃する高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備も予定通り進められるだろう。

 韓国は日本同様、米国の核の傘に頼っているのが現実だ。地域安全保障の維持には日米韓3カ国の連携も不可欠だ。今後、トランプ氏にはこうした認識を深めてもらう必要があろう。過激な発言で不安や反発を招いているトランプ氏だが、特に安保問題では経験豊富な副大統領や議会多数を占める共和党に助言を求めるものと期待したい。

 その上で肝心なのは北朝鮮の瀬戸際外交に翻弄(ほんろう)されないことだ。北朝鮮は米国との直接交渉を実現させるまで核・ミサイルを放棄しない公算が大きい。米本土への核攻撃能力をちらつかせ、米国との対話を自分たちに有利に運び、平和協定などを通じ体制保障を取り付けるという戦略を描いているとみられる。

 北朝鮮は早速、自国メディアを通じ「核放棄の期待は妄想」(党機関紙・労働新聞)などとトランプ氏を牽制(けんせい)している。米新政権の出方にかかわらず、自分たちの核開発路線は不変だと宣言したに等しい。

 緊張を高めて譲歩を迫る北朝鮮の術中にはまることがあってはならない。また一時的な融和ジェスチャーに惑わされないよう注意を払うべきだ。核問題をめぐる6カ国協議で北朝鮮は核放棄に応じるようなそぶりを見せながら実際は開発の手を緩めることがなかった。

 米新政権としては、中間選挙の結果や任期中の実績などを意識して政策の一貫性が失われ、北朝鮮を利する結果を招いた悪しき前例も忘れてはならない。

「拉致解決」へ協力要請を

 安倍晋三首相は今月17日、ニューヨークでトランプ氏と会談する方向で調整中だ。日米同盟の重要性を直接確認する極めて大切な場になろう。解決の糸口がつかめない日本人拉致問題でも協力を要請してほしい。