パリ協定発効へ、日本は早期批准に努めよ


 2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組みである「パリ協定」が、11月にも発効することが確実となった。温室効果ガスの2大排出国である米中両国や、温暖化に伴う海面上昇の被害を受けやすい島嶼(とうしょ)国などの批准が進んだ結果だ。日本も早期批准に努めるべきだ。

 米中両国が9月に批准

 昨年末の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、55カ国以上が批准し、批准国の温室ガス排出量が世界の55%以上になると30日後に発効する。今月に入ってインドが批准し、欧州連合(EU)も月内に批准する方針のため、11月に発効する見通しとなった。

 当初は18年中の発効を目指していた。早期発効を後押ししたのは米中両国だ。世界の排出量の約4割を占める両国は9月、批准手続きを終えたことを共同で発表。来年1月の任期切れを前にレガシー(遺産)をつくりたいオバマ米政権と、深刻な大気汚染で環境政策に力を入れる中国の思惑が一致した。

 温暖化による異常気象で全世界は大きな被害を受けている。南太平洋の島嶼国では、海面上昇で国家消滅の危機に瀕している。このまま温暖化が続けば、被害はさらに深刻になろう。対策は待ったなしだ。

 もっとも、パリ協定をめぐっては課題も残る。協定では産業革命前からの世界平均気温の上昇幅を2度未満に抑えることが目標だが、各国の掲げる現在の削減目標では不十分だ。

 特に排出量1位の中国は、排出量が30年ごろまでにピークを迎えるよう取り組む方針を打ち出している。つまり、30年までは増やせるということだ。これでは「2度未満」の達成は到底おぼつかない。もっと削減のペースを上げるべきだ。

 パリ協定では、各国に5年ごとの目標見直しを義務付ける。世界全体の取り組み状況も定期的に検証する。発効後はこうしたルールを自国に有利な形にしようとする大国同士の応酬も予想されるが、実効性を確保して温暖化の進行を確実に抑えなければならない。

 一方、日本は「早期発効を重視」(安倍晋三首相)としているものの、批准案の国会提出すら済んでいない状況だ。このままでは、日本抜きでパリ協定が発効する可能性がある。

 日本は1997年、先進国に温室ガスの排出削減義務を課した京都議定書の採択に大きな役割を果たした。だが、こうした「環境先進国」としての存在感は国際社会で低下しつつある。

 日本は現在、温室ガスの排出量を「30年までに13年比で26%削減」との目標を掲げている。だが東日本大震災以降、日本は電源の9割を温室ガス排出の多い火力に頼っている。これでは目標達成は困難だ。

 原発の再稼働が必要だ

 温室ガスの排出量削減と電力の安定供給の両立には、温室ガスを排出しない原発の再稼働が必要だ。

 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、電源比率を30年度に20~22%に引き上げる方針だ。温暖化対策のためにも実現への道筋を付ける責任がある。