シールズ解散、若い世代の共感広がらず


 安全保障関連法や憲法改正阻止を訴えて国会前でデモを繰り広げ、参院選で野党共闘を呼び掛けた学生団体「SEALDs(シールズ)」が解散した。シールズは昨年の憲法記念日に結成されて以来、約1年3カ月にわたって活動したが、安保関連法や「改憲勢力3分の2」の阻止という目標を実現できず、支持は広がりに欠けた。

民青が背後で影響力行使

 若者の政治への意識の低下が問題視される中、一部マスコミは、自ら政治について発言する若者の代表として、シールズの活動を積極的に報道してきた。

 しかし、グループの中には、思想教育を受けた共産党系民青関係者が複数おり、背後で影響力を行使していることが指摘されている。また、リーダー格の奥田愛基氏ら多くの創設メンバーは、左翼的思想傾向が強いキリスト教愛真高校(島根県)出身だ。こうした背景を指摘せずに、シールズの活動を大々的に取り上げる一部マスコミの報道姿勢には、疑問が残った。

 シールズの前身は、反原発、特定秘密保護法反対を掲げた学生有志の会で、これが解散、名称変更してシールズとなった。結成以来、シールズは、他団体と共に国会前などで大規模な抗議デモを主導してきた。

 7月の参院選では、32の1人区のうち、野党統一候補が11議席を獲得。シールズが、この野党共闘実現に一定の役割を果たしたことは事実だ。

 しかし、時事通信の出口調査によると、参院選の比例代表で自民党に投票した10代は40・1%で、自民党の得票率(35・9%)と比べても高かった。シールズの活動への若者の共感は、広がらなかったのが実情だ。

 ラップ調のリズムに乗せて自らの主張を表明するなど、スタイルの斬新さが話題となったが、安保法制を「戦争法」と一方的にレッテル貼りして不安を煽(あお)るなど、主張自体は従来の左翼と変わらない。さらに、昨年8月の国会前集会では安倍晋三首相に向かって「安倍はやめろ」などと怒号を浴びせた。こうした言動に多くの若者は違和感を覚え、支持に広がりを欠いたという現実をしっかりと受け止める必要があるだろう。

 民進党など野党も「若者票」欲しさにシールズに接近したが、反省が必要だ。政権交代を目指すのであれば、民進党はこうした運動に迎合せず、外交・安保政策や改憲案について、具体的な対案を示すべきだ。

 一方、解散の日にシールズは「終わったというのなら、また始めましょう。始めるのは私であり、あなたです。何度でも反復しましょう」とのメッセージを発表した。こうしたことから、今後、同様の活動を再開する可能性もあり、目が離せない。米軍普天間基地の辺野古への移設反対などを訴える「シールズ琉球」は解散せず、今後も活動を続ける。

日本取り巻く情勢直視を

 若者による政治参加は歓迎すべきことだが、抽象的な感情論を一方的に訴えるだけの運動には、希望はない。若い世代には、日本が置かれている国際情勢をしっかり直視した上で、明確な安保観を持ち、政治意識を涵養していくことを期待したい。