五輪テロ対策、情報機関と共謀罪を創設せよ


 リオデジャネイロ五輪はテロや事件が発生せず、競技が無事に進行している。当局は軍や警察など8万人を動員して万全の警備体制を敷いており、今のところテロ対策は奏功している。

 だが、油断は禁物だ。開会前にはフランス選手団へのテロ計画の情報もあった。もとより日本もテロと無縁でない。東京五輪に向けてテロ対策にぬかりがないか、冷静に検討したい。

 野党の反対で法案未成立

 テロ対策で最も重要なのは情報だ。2005年7月の英グレンイーグルズ・サミットではロンドン同時テロ事件に遭遇し「テロ対策に関するG8首脳声明」を発表したが、その中で「テロリストは国境を越えて活動するため、国内機関及び国家間でより効果的に連携することが必要。国内諜報機関と対外諜報機関の連携、テロ情報を扱う政府機関との情報共有の強化を図る」と、テロ防止へ情報共有の重要性をうたった。

 ところが、わが国には海外の情報機関と対等に話し合え、対テロ情報共有の受け皿となる本格的な情報機関が存在しない。またスパイ防止法もなく、各国の諜報機関は情報漏れを恐れてわが国への情報提供を躊躇(ちゅうちょ)してきた。これがテロ対策の盲点だ。

 もう一つの問題は、テロ組織が凶悪なテロを計画している時、それを実行する前に封じ込める、未然防止の法整備が不十分な点だ。

 国連は各国が連携してテロなどの国際犯罪を防止するため、2000年に「国際組織犯罪防止条約」を採択した。同条約は03年に発効し、現在185カ国が批准している。

 ところが、わが国は03年の通常国会で与野党が賛成し条約を承認したものの、いまだ批准しておらず、未締結国のままだ。そのためテロ資金の根絶を目指す国際機関「金融活動作業部会」(FATF)などから名指しで批判されている。

 これは由々しきことだ。なぜ批准できないのか。それは同条約が4年以上の懲役・禁錮を科すものを「重大犯罪」と定め、犯罪を計画・準備した段階で罪に問える「共謀罪」を国内法に設けることを義務付けているからだ。

 政府は共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を3度にわたって国会に提出したが、左翼メディアや野党が反対し、いまだ成立していない。それで条約を批准できないでいる。

 共謀罪について反対派は「一般市民も飲み屋で相談しただけで捕まる」「内心の自由すら認められない」などと主張し、日弁連は「電話や電子メールのやりとりが監視対象になる恐れがあり、市民を萎縮させる効果も大きい」と異を唱えた。

 だが、これは恣意的な反対論にすぎない。組織犯罪処罰法は「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、行為が組織により反復して行われるもの」を対象団体に規定している。共謀罪もその範囲で適用され、一般市民とは無縁だ。

 後手に回ってはならない

 根拠なき反対論に影響され、テロ防止を後手に回らせてはならない。政府は4年後の東京五輪を見据え、本格的な情報機関と共謀罪の創設を急ぐべきだ。