尖閣諸島、国際社会が認める実効支配を


 南シナ海での中国による領土拡張の動きが国際的な非難を浴びている中で、今度はわが国の尖閣諸島周辺の接続水域に、ロシア、中国海軍の艦艇が申し合わせたように相次いで入った。何故このような事態をもたらしたのか、これを機会に反省する必要がある。

 中国軍艦が接続水域に

 中国軍艦が尖閣周辺の接続水域内に入ったのは初めてだ。尖閣周辺では中国公船による領海侵入が繰り返されているが、今後は軍艦の侵入も念頭に一層の対応強化が求められよう。

 今回の事態を受け、外務省の斎木昭隆事務次官は中国の程永華駐日大使に抗議した。これに対し、程大使は「尖閣諸島は中国の領土であり、抗議は受け入れられない」と反論。尖閣は日本固有の領土であり、決して容認できない主張だ。

 わが国は第2次世界大戦後、自国領土が旧ソ連(ロシア)などよって不法に占拠されている。このことへの対応の拙劣さが不法占拠の継続を招いているのみならず、新たな対日領土要求を招いている。中国による尖閣がそれだ。

 旧ソ連・ロシアに対する「北方領土」返還、韓国への竹島返還を求める“慎重な対応”が、今日の領土問題の根底にある。連合国の占領解除に伴って言論の自由が回復されて以降、共産党を除く各政党は「北方領土」を南樺太、千島列島、北海道付属の4島と理解し、返還の対象として掲げていた。

 それが先ず社会党が、次いで自民党なども千島列島を取り下げ、北海道付属4島に矮小化された。返還要求を切り下げたのだから、不法占拠国にやがて返還をあきらめるであろうと思われても仕方がない。それだけではなく、日本政府・国民は領土への愛着心はないと判断され、周辺国から新たな領土要求を突き付けられているのだ。

 領土の取得については「時効による取得」という方法がある。外国の国際法文献には必ず載っているが、日本の国際法の概説書には記載がない。この方法は、仮に国際法上、違法な方法であっても取得し、一定期間、平和裏に実効支配すれば領有権を獲得することを是認している。日本の民法にも、敷地について同様の規定がある。

 問題は「平和裏の実効支配」の期間だが、英国とベネズエラの条約での50年間が参考にされることが多い。ただ、時効を中断させるような軍事紛争を含む事態が発生すれば、ゼロから実効支配を積み重ねなければならない。

 接続水域は領海ではないが、公海と違って沿岸国の安全を確保するため特殊な権利が是認されている。これを侵入する国の側から見れば、領有権獲得のための実効支配への第一歩でもある。中華人民共和国――中国は建国以来、周辺国すべてと干戈を交えてきた国家だ。

 灯台建設などが必要だ

 口だけで日本固有の領土だと主張していても、国際社会では受け入れられない。

 灯台建設、流れ着いた浮遊物の除去、陸上の生存動植物の管理など国際社会で認められる実効支配を実施することが必要な段階になっている。