熊本地震本震、余震や土砂災害への警戒を


 熊本県益城町で震度7の揺れを観測した地震(マグニチュード〈M〉6・5)に続き、熊本地方を震源とする地震が発生して熊本市や同県菊池市などが震度6強の揺れに見舞われた。

 被災者の救出や支援を急ぐとともに余震や豪雨による土砂災害などに警戒する必要がある。

 阪神大震災級の規模

 地震が発生したのは昨日の午前1時25分ごろ。震源の深さは約12㌔、M7・3で、1995年に起きた阪神大震災級だ。その後も震度6強などの地震が相次いだ。

 これまでに32人の死亡が確認され、震度7の地震と合わせると死者は41人に上っている。死者の中には、震度7の地震で避難し、その後帰宅した矢先に犠牲になった人もいる。痛ましい限りだ。

 震度6強を観測した熊本県南阿蘇村では、大規模な土砂崩れで国道が寸断され、阿蘇大橋が崩落した。東海大の学生アパートでは11人が生き埋めとなり、学生2人が死亡。負傷者も多数出ており、熊本県では約9万人が避難した。

 政府は被害拡大を受け、自衛隊の派遣規模を約2万5000人に増強することを決定。米軍による災害支援の受け入れに向けて調整に入った。

 警察や消防も含め、倒壊した建物や孤立した地域に取り残された人たちの救助に全力を挙げなければならない。すでに避難した被災者への十分な支援も必要だ。

 気象庁は震度7の地震が「前震」で、今回が「本震」との見解を示した。2011年3月の東日本大震災(M9・0)の2日前にもM7・3の地震があり、後に前震とされた。

 M6・5程度の地震が発生すれば普通は本震と捉えるが、今回はさらに大きな地震が起きた。これはデータがある1885年以降では初めてのことだという。

 震度7の地震は、日奈久断層帯北端の高野-白旗区間がずれて発生した。これに対し、本震は日奈久断層帯とT字形に接する布田川断層帯付近で生じた。地震は布田川断層帯の北東延長線上へ続き、阿蘇地方や大分県中部ではM5・3~5・8の地震が起きるなど余震が広域で活発化している。

 気象庁は今後1週間で、最大震度6程度の地震が発生する恐れがあると注意を呼び掛けている。余震で崩れることもあるため、被災者は損壊した建物に近づかないようにするなど二次災害への注意が不可欠だ。また、九州北部では激しい雨が降ると予想されており、揺れの大きかった地域では土砂災害への警戒も怠れない。

 情報発信の在り方検証を

 地震が起きた時に前震かどうかを判断することは現状では難しい。ただ被害を減らすには、余震への注意の呼び掛けなど政府や自治体の情報発信で改善の余地があるのではないか。きちんと検証してほしい。

 今回の本震では家屋や家具の下敷きになって亡くなった人が多いとみられる。決して人ごとと思わず、一人一人が家屋の耐震化や家具の固定化、避難場所・ルートの確認などの地震対策を進める必要がある。