石炭火力新設、電力の安定供給に必要だ


 石炭火力発電所の新設について、地球温暖化防止の観点から否定的だった環境省が、一転して容認することを決めた。化石燃料に頼るのは時代に逆行するようだが、あらゆる手段を尽くし、電力の安定供給と二酸化炭素(CO2)排出削減目標を実現しようとする官民の狙いは評価したい。

 注目の高効率化技術

 季節、天候、昼夜を問わず、一定量の電力を安定的に低コストで供給できる電源はベースロード電源と呼ばれる。その代表格は原子力発電と石炭火力発電だが、わが国では東日本大震災以降、ほとんどの原子力発電所が停止したため、火力発電がそれを代替してきた。

 ところが原発は運転中にCO2を出さないのに対し、石炭は大量に排出するため、地球温暖化対策を進める上でジレンマに直面してきた。環境省が、山口県宇部市での石炭火力など5件の新設計画について、環境影響評価(アセスメント)でこれまで「是認できない」と異議を表明してきたのもこのためだ。

 今回、新規参入を含めた電力36社は「電気事業低炭素社会協議会」を設け、独自の排出規制に取り組むことを決めた。削減実績を政府に報告し、努力が不十分な場合は社名公表も検討する。環境省は、電力業界の対応強化を条件に石炭火力の新設容認に転じた。

 電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は、同協議会を通じ、2030年度に1㌔㍗時当たりのCO2排出量を13年度に比べ35%減らす自主目標の達成を目指すとしている。官民一体の取り組みが重要だ。

 注目したいのは、石炭火力発電を高効率化するわが国の技術だ。現在、微粉炭火力の超々臨界圧(USC)が最高効率の技術として実用化され、世界的に高い環境技術で知られている。今後、微粉炭火力の効率向上とともに、亜瀝青炭(あれきせいたん)や褐炭も使用可能な石炭ガス化火力(IGCC、IGFC)の技術開発を進めることで、さらなる効率化を期待したい。

 また、CO2排出削減の余地の大きい途上国に省エネ技術を輸出、普及させることによって日本の存在感を高めたい。特にインドやインドネシアなど多くの途上国では石炭火力への依存度が高く、排出削減のために、これらの技術が広く行き渡る可能性は高い。

 同時に火力発電については、効率の悪い既存設備を廃棄するなどの対策も進めなくてはならない。わが国の火力発電は30年に石炭で約3割、天然ガスで約5割、石油では約9割が運転開始から40年を超過する。効率化や設備信頼性を高めるには、経年に応じた設備更新が必要だ。

 原発再稼働を着実に

 一方、経済産業省は電力供給安定とCO2排出削減のため、国全体が目指す電源構成として、発電量に占める再生可能エネルギーと原発の比率を30年度に44%(うち再生エネ22~24%、原発20~22%)とする計画を策定している。今後は個別の事業者にも、それぞれ再生エネや原発で「44%」を達成する計画の提出を求めるが、原発を活用するのであれば再稼働を着実に進めていくことが肝要だ。