ウクライナ、政治危機からの脱却急げ


 ウクライナではこのほど、連立を組む親欧州連合(EU)派の与党4党のうち、欧州型の制度改革を訴える自助党と、前政権を崩壊させたデモを主導した「ティモシェンコ連合(祖国)」が相次いで連立から離脱した。

親EU派の連立崩壊

 両党は、ポロシェンコ政権が東部で分離要求を掲げる親露派の権限強化を盛り込んだ停戦合意を結んだことなどで批判を強めていた。合意は東部2州に「特別な地位」を与えるウクライナ憲法改正を定めている。

 連立には第1党の「ポロシェンコ連合」とヤツェニュク首相の第2党「人民戦線」が残るが、最高会議(国会、定数450)の議席は計217で過半数の226には届かない。連立政権は事実上崩壊し、ウクライナは深刻な政治危機に陥った。新たな連立協議には1カ月の猶予があるが、失敗すればポロシェンコ大統領が解散総選挙に踏み切る可能性もある。

 ポロシェンコ大統領は経済危機の責任を問い、ヤツェニュク首相の辞任を要求していた。首相は強く反発し、ヤツェニュク内閣不信任案は否決された。今後も政権内部の争いが続けば、欧米が求めてきた政治、経済改革の停滞は避けられない。

 国際通貨基金(IMF)もウクライナの統治改善と汚職対策の遅れに懸念を表明した。同国経済は収縮し続けており、通貨フリブナは11カ月ぶりの安値付近をさまよい、IMFは次回の融資分17億㌦(400億㌦の西側のウクライナ支援計画の一部)の供与を停止している。政治危機からの脱却が急がれる。

 ウクライナでは、富豪らが基幹産業を押さえる「旧ソ連型」の経済構造の改革が大きな懸案となっている。だが、東部の紛争で富豪らが資金提供する義勇軍部隊に頼らざるを得ないこともあって進展しない。

 紛争解決を目指し、ウクライナと露独仏の4カ国首脳が停戦合意(ミンスク合意)して12日で1年を迎えた。しかし、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で2014年4月に始まった親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍との交戦は今なお散発的に続いている。

 約2年間にわたる東部紛争で9000人以上の民間人らが犠牲になったと言われる。親露派を支援するロシアと、これに反発するウクライナとの対立は解消されず、正常化には程遠い。停戦合意の履行が急がれるが、東部2州の権限を強化する改憲はロシアの影響力を強め、ウクライナの東西分断を加速させることが懸念される。

 ロシアは世界的な原油安で大きな打撃を受けており、ウクライナ東部紛争に伴う経済制裁が追い打ちをかけている。国際社会はロシア、ウクライナに停戦合意履行を求めるとともに、ロシアがウクライナの主権と領土の一体性を尊重するように圧力を掛け続ける必要がある。

日本は連携強化せよ

 日本は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)前の4月に、ポロシェンコ大統領が日本で安倍晋三首相と会談する方向で調整している。

 安倍首相は東部紛争解決に向け、ウクライナとの連携を強化すべきだ。