米ASEAN、連携強化で航行の自由守れ


 米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)による首脳会議が米カリフォルニア州の保養施設サニーランズで開かれ、中国が進出する南シナ海情勢を念頭に、航行と飛行の自由の確保、紛争の平和的解決、軍事拠点化回避などを盛り込んだ共同声明「サニーランズ宣言」を発表して閉幕した。ASEAN加盟10カ国首脳を米国に招き、会議を開くのは初めてだ。

オバマ氏が中国を牽制

 サニーランズは2013年6月、中国の習近平国家主席が就任3カ月後にオバマ米大統領と会談して「広大な太平洋には(米中)両国を受け入れる十分な空間がある」と強調し、米国との「新型大国関係」構築をアピールした因縁の場所だ。

 中国の強引な海洋進出に周辺国は深い懸念を抱いている。南シナ海で人工島の造成、飛行場の建設、軍事施設の構築を着々と進める中国に対し、米国はASEANとの連携を強化しなければならない。

 オバマ大統領は首脳会議後の記者会見で、アジアへの「強力で永続的な関与」を強調して「国際法が許すあらゆる場所で飛行、航行する」と述べ、名指しこそしなかったが中国に強い牽制(けんせい)の意思を示した。

 ASEANは昨年末に単一市場などを目指す共同体を発足させた。だが、中国に対しては一枚岩となりきれていない。南シナ海で領有権問題を抱えるフィリピンやベトナムは対中強硬派だが、ラオスやカンボジアなどは国内のインフラ整備で多額の支援を受けるなど中国との経済的結び付きが強い。中国への名指しを避けたのは、こうした国々に配慮したものだ。

 米国には中国のASEAN切り崩しへの戦略的対応が求められよう。オバマ大統領はASEAN加盟国のうちシンガポールなど4カ国が参加している環太平洋連携協定(TPP)について「経済統合を前進させ、貿易のより強いルールを規定するものだ」と述べ、中国への対抗も念頭に参加を促した。

 ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が先月まとめた報告書は、30年までに中国軍が複数の空母機動部隊を保有する可能性が高いと指摘し、「米国にとってのカリブ海やメキシコ湾と同じように、南シナ海が事実上、中国の湖になる」と分析した。衝撃的な警告である。

 国際法に基づいた南シナ海での航行の自由作戦は、必ず継続しなければならない。南シナ海の緊張緩和、中国のさらなる埋め立てや軍事拠点化を阻止するには必要な措置である。

 米海軍のイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」は先月末、中国の実効支配下にある南シナ海・西沙(英語名パラセル)諸島のトリトン島から12カイリ(約22㌔)内を事前通知なしに航行した。昨年10月に、米艦が南沙(スプラトリー)諸島にある中国の人工島から12カイリ内に派遣されたことに続くものだ。

毅然たる態度示し続けよ

 こうした行動が周辺国の安心と信頼を生み、中国の海洋進出への防波堤になり得ることを忘れてはならない。オバマ政権は中国に毅然(きぜん)たる態度を示し続けるべきだ。

(2月18日付社説)