新国立競技場、「日本らしさ」世界に発信を


 2020年東京五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場のデザイン・建設計画が決まった。大会のシンボルとなり日本スポーツの新しい聖地となる。これを機に、旧計画やエンブレムの白紙撤回でミソが付いた五輪への機運をもう一度高めていきたい。

 工期短縮が決め手に

 日本スポーツ振興センター(JSC)が、設計・施工の公募に応じた2陣営の中から採用を決定したのは、大成建設と梓設計、建築家隈研吾氏によるA案。建築家ら7人の委員が、事業費縮減、工期短縮、日本らしさ、環境計画など9項目について採点し、A案610点、B案602点と8点の僅差だった。どちらも甲乙付け難かったが、点数が重点配分された工期短縮の項目で差がついた。

 新国立をめぐっては、デザイン段階で1300億円とされていた旧計画の総工費が2500億円にまで膨れ上がり批判が集中。今年7月に安倍晋三首相の決断で白紙撤回された。結局ザハ・ハディド氏のデザイン決定から2年半以上が浪費された。

 こうした経緯があったため、工期短縮の項目に重点配分されたのは致し方ない。国際オリンピック委員会(IOC)は五輪準備のために20年1月末の完成を求めている。これに間に合うように16年12月に着工、19年11月末に完成させる予定だ。着実な建設計画の進捗を期待したい。

 採用された案は「木と森のスタジアム」をコンセプトにしている。周りの神宮の森の景観との調和に重点を置いているのが大きな特徴だ。そのため高さを50㍍に抑えた。観客席の屋根は、鉄と木材を組み合わせ国産スギ材を多用する予定だ。

3層構造で約6万人を収容。真夏の開催となるため、暑さ対策では「風の大庇」を設け、観客席に風を呼び込んだり、日射反射率の高い塗装を施したりして場内の気温上昇を抑える。バリアフリー化の取り組みでは、各層のスタンドで車いす利用者が観戦できる席を配置する。

 総工費は、1490億円。整備計画見直し後に上限とされた1550億円を60億円下回る。日本らしさや環境計画そして事業費削減の面から見て、旧計画よりは遙(はる)かに満足のいくものと言える。旧案は近未来建築を思わせる点で先進科学技術大国のイメージと連なる一方で、デザイナーが外国人だったこともあってか、日本の文化・伝統との繋(つな)がりを感じさせず、環境との調和もなかった。

 東京五輪は日本と東京について世界に大きく発信する絶好の機会である。そういう意味で、新国立競技場は東京五輪だけでなく、日本文化のシンボルとなる。「日本らしさ」をアピールできるスタジアムとなることを期待したい。

 五輪後の利用が課題

 大会後はサッカーワールドカップ(W杯)が招致できるよう観客席を約8万人分に増やすが、五輪後の利用では今後なお検討すべき課題が多い。維持費に年間数十億円かかると見積もられている。政府は民間事業への移行も念頭に、大会後の運営管理を検討する作業部会の設置を発表したが、国民に十分納得のいくものとすべきだ。

(12月25日付社説)