探査機あかつき 金星の謎解明へ再挑戦だ


 金星探査機「あかつき」が金星を回る軌道に投入された。2010年12月の失敗以来、5年越しの再挑戦での成功である。地球以外の惑星で、日本の探査機を周回軌道へ投入することに成功したのは初めて。

 待ちに待った金星の謎解明は、これからが本番だ。既に4年半の設計寿命を超えており、機体や観測機器への影響には不明な点もあろうが、万全を期して探査に取り組んでほしい。

軌道への投入に成功

 何とも見事な執念である。10年5月にH2Aロケットで打ち上げられたあかつきは、同年12月に金星への周回軌道投入を試みたが、主エンジンの故障、破損で失敗。その後は、太陽の周りを回りながら再投入の機会を待っていた。

 ただ、そうはいっても容易ではない。主エンジンは破損して使えない。幸い、姿勢制御用の小型エンジンが使えることが分かったが、それで金星の観測に適した周回軌道に投入できるのか、不安は少なくなかった。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、設計寿命を考慮して15年の金星最接近に向け、最適な軌道の割り出しと、その軌道投入への手順などを探った。あかつきの軌道は太陽や金星などの重力に影響されるほか、計算上は最適に見えても、金星の日陰に入る時間が長過ぎるとバッテリーが枯渇してしまうなど厳しい制約がある。文字通り、「寝ても覚めても」軌道計算の毎日を過ごし、今回の軌道計画に至ったという。

 さて、「千載一遇のチャンス」(プロジェクトマネジャーの中村正人JAXA教授)をものにしたあかつきのミッションは、これからが本番である。

 大きさは地球とほぼ同じで、地球の「双子星」と言われる金星だが、水と生命に満ちた地球とは対照的に、大気を二酸化炭素が占め、地表付近は450度、90気圧の高温高圧というまさに死の星の様相だ。

 硫酸の厚い雲が覆い、大気の高層では時速360㌔に達する「スーパーローテーション」と呼ばれる超高速の風が吹く。現在の地球の気象学では説明できない現象である。

 これら金星大気の謎の解明にあかつきは挑む。可視光のほか、赤外線や紫外線など5種類の波長の異なるカメラを搭載。雲に覆われて直接見ることができない金星大気の地表付近から高層までさまざまな高度での様子を観測し、大気の構造を立体的に把握する。

 金星の謎の解明は、双子星の運命を分けた要因を探るだけでなく、地球気象の理解を深め、地球温暖化の予測精度の向上にもつながる。

慎重で果敢な取り組みを

 懸念は確かにある。設計寿命を既に過ぎていることで、機体や観測機器の性能を十分に発揮できるか。また、当初計画より金星を遠く離れる楕円軌道を回るため、画像の解像度や接近観測の頻度に影響はないか。

 JAXAは機器の調整などを進め、来年4月から2年間、本格的な観測を行う。すでに一部のカメラを使い金星の試験的な撮影に成功しているが、本格運用に当たっても慎重かつ果敢な取り組みを期待したい。

(12月12日付社説)