油井さん宇宙へ、日本独自の有人飛行目指せ


 ロシアのソユーズ宇宙船の打ち上げが成功し、45歳にして初の宇宙飛行、しかも約5カ月という長期滞在となる油井亀美也さんの「挑戦」が始まった。

 日本の無人補給機「こうのとり」のキャプチャー(把持)や日本実験棟「きぼう」での宇宙実験など数々のミッションが待ち構える。任務の遂行はもちろん、航空自衛隊テストパイロットの経歴を生かし、日本独自の有人飛行につなげてもらいたい。

空自出身の「中年の星」

 油井さんは、まさに「中年の星」の形容にふさわしい。少年の頃から宇宙に憧れつつも、高校卒業後は家計を案じて防衛大に進学し、空自でテストパイロットへの道を歩む。妻の後押しもあり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が募集した宇宙飛行士候補に39歳で選ばれ、その後もロシア語の習得やソユーズの操縦訓練など、未知への挑戦を続けてきたのである。そして今、45歳で国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在という新たな高みを目指す。

 挑戦の一つは、8月に打ち上げられる「こうのとり」5号機の把持、すなわち「こうのとり」がISSへドッキングする際、油井さんがロボットアームを操作して掴(つか)み、ISSに接続させるのである。

 また、参加国の各モジュールから構成されるISSシステムの運用・維持管理、さらには宇宙環境を利用したさまざまな科学実験などである。

 科学実験では、「きぼう」でたんぱく質の結晶成長実験を行うほか、船外プラットホームに高エネルギー宇宙線観測装置を設置。さらに、将来の月・火星滞在に向けた基礎的な医学データの採取などの実験も行う。

 ISSでの宇宙実験や国際協力には年間約400億円の経費がかかっており、費用対効果などの観点で予算の縮小が議論されている。

 しかし、ISSが与える宇宙環境は、微小重力、高真空などといった地上では容易に得ることのできない特徴がある。ISS利用が本格化した2009年以降の経験から、強みを生かせる分野が分かり、昨年からはそうした分野への集中を図っているという。

 運用期間は当初予定の16年までから20年に延長され、米国はさらに24年までの延長を表明して日欧とロシア、カナダの参加国間で検討が進められている。米国の延長表明は有人火星探査を睨んでのことである。

 日本も20年までに打ち上げる3機の「こうのとり」のうち1機を、システムの効率化と軽量化を図った新型にする構想がある。軌道間輸送機や回収機能を持たせた発展形につながるものである。

 回収型が検討されるのは、実験試料などを持ち帰る手段が米スペースシャトルの退役後、ソユーズしかなく、搭載できる量が数十㌔と少ないためである。

国際貢献に力発揮を

 さらにその延長線上にあるのが再利用型有人宇宙船であり、そこに思い描くのは、テストパイロット出身の油井さんが操縦する姿である。

 国際貢献と宇宙開発利用の一段の進展に力を存分に発揮してほしい。