初の日本人船長の若田光一さんの活躍を期待


 若田光一宇宙飛行士が4度目の宇宙へ、そして2度目の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在へ、飛び立った。  約半年の長期滞在では各種実験のほか、後半には日本人初のISS船長を務める。乗組員全員の指揮官として、ミッション実施の司令塔となり、緊急時の対応などにも責任を持つ。これまでの経験も生かしながら、存分に力を発揮してほしい。

打ち上げ当日にISSへ

 若田さんらが搭乗したソユーズ宇宙船は、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、約6時間後、ISSに無事にドッキングした。これまでは到着まで約2日かかっていたが、今年3月の打ち上げから短縮された。  若田さんの宇宙滞在は4回目。初回の1996年は、米スペースシャトルで主にロボットアームを使った衛星の回収・放出に従事した。

 2回目は2000年で日本人として初めてISSの組立作業に参加。3回目が日本人初の長期滞在となる09年で、ISSに4カ月滞在した。この間、「おもしろ宇宙実験」にも取り組み、7月には日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームを取り付け完成させた。

 今回の長期滞在では「きぼう」で生命科学や物理、宇宙医学などさまざまな分野の実験を行うほか、小型衛星の放出や4Kの高感度カメラを使ったアイソン彗星の観測なども行う。また、得意とするロボットアーム操作で、米国の民間貨物船「ドラゴン」「シグナス」などのドッキングにも携わる予定である。

 特に今回は、滞在の後半となる来年3月から日本人初のISS船長として指揮を執る。ISSの維持管理や実験の実施、米国とロシアの乗組員計5人の安全確保などにも責任を持つ。打ち上げ前の会見で、若田さんは「成功のカギはチームワーク。2年半以上、一緒に訓練をしてきただけに、成功できると思う」と語っていたが、気負うことなく、かつ豊富な経験に裏付けられた実力を存分に発揮してもらいたい。

 わが国はISS関係費として毎年約400億円を拠出。運営費をH2Bロケットで打ち上げる無人補給船「こうのとり」による運搬で負担し、15年度までに7機を打ち上げることになっている。

 今年1月に決まった新しい宇宙基本計画(今年度から5年間が対象)では、財政上の制約もあり、経費削減が求められている。ISS参加国のうち、米国、ロシア、欧州、カナダが少なくとも20年までの運用継続を決めている。わが国も16年度以降の継続は決まったものの、「費用対効果を十分評価した上で、参加形態の在り方を検討すべき」(新基本計画)としており、必ずしも前途洋々でない。

アジア諸国との協力を

 ただ、日本はアジア唯一の参加国であり、ISSは本格運用が始まって間もない。本格的な実験設備を持つ「きぼう」の他のアジア諸国への開放をはじめ、低コストの小型衛星放出などの国際協力によって「宇宙外交」を有効に進められる。この点でも、若田さんの活躍に期待したい。 (11月9日付社説)