上海協力機構、中露の連携強化に備えよ


 ロシア中部ウファで上海協力機構(SCO)、新興5カ国(BRICS)の首脳会議が開催された。両会議を主導する中露首脳は欧米基軸に挑戦し、これに代わる国際政治・経済秩序を構築する構えをアピールした。
 我が国は欧米との連携を深め、中露に付け入る隙を与えてはならない。

 一段階上の協力関係に

 ロシアはウクライナのクリミア編入を強行しただけでなく、ウクライナ東部の紛争に軍事介入し、数万人とされる死者を出した。停戦合意が発効したものの、いつでも再燃しかねない。プーチン大統領はクリミア編入の正当化を試みているが、他でもないロシアが1997年にウクライナと友好協力条約・地位協定を締結し、ウクライナの領土保全を約束している。

 ロシアのクリミア編入が、国際社会全体の根本的利益を侵害する重大な国際法違反であることは明白である。国際秩序を守ろうとする欧米が経済制裁に踏み切ったのは至極当然のことであるが、プーチン大統領はこれに反発を強めている。

 一方、中国は南シナ海の多くの海域を自国のものだと強弁している。フィリピンやベトナムなど周辺国と領有権を争う南沙(英語名スプラトリー)諸島の岩礁を不法に埋め立て軍事基地化を進め、地域の緊張を高めている。この地域は我が国と中東を結ぶ極めて重要なシーレーン(海上交通路)でもある。

 中露はこれまでも、それぞれの利害から接近し、欧米に対抗する中露枢軸とも言える関係を築きつつあった。もっとも、中国の急速な経済成長や拡大主義に対してロシアには警戒論が根強い。一方、中国にとって最大の貿易相手は欧米であり、ロシアへの過度な政治的接近には警戒感があった。両国は蜜月関係をアピールしながらも、利害は必ずしも一致しなかった。

 だが、ロシアはウクライナ問題後に主要8カ国(G8)から除外され、欧米から経済制裁を科せられた。中国は岩礁埋め立てで米国の強い反発を招いた。両国はついに、一段階上の協力関係に踏み込んだのだ。BRICS首脳会議は「国際法に違反する一方的な軍事介入や制裁を非難する」と共同宣言に明記。ロシアや中国は、自らが国際法に違反し他国の主権を蹂躙している事実を棚に上げ、制裁を行う国際社会を非難した。

 共同宣言はさらに、「第2次世界大戦の結果を改竄する試みは認めない」とも明記した。歴史問題を対日カードに使う中国は、日本包囲網にロシアを引き込む試みを進めていた。ロシアはこれまで、中国の働き掛けに一歩引いた対応をしていた。しかし今回、中国の習近平国家主席の招待に応えプーチン大統領は、中国が9月に北京で開く抗日戦争勝利記念行事に「我々は共同で参加する」と表明。SCO加盟各国にも参加を呼び掛けたのだ。

 日本は独自の関係模索も

 無論、中露が連携を一層強化しているといっても、両国の利害は多くの面で対立する。

 我が国は欧米と連携しつつ、中露や中央アジアのSCO加盟国などとの独自の関係構築を模索していく必要もある。

(7月12日付社説)