地方大学活性化で若者定着を


 総務省の発表した住民基本台帳に基づく人口調査によると、今年1月1日現在の日本人の総人口は前年同期より27万1058人少ない1億2616万3576人だった。
 6年連続で減っているが、同調査による減少数は過去最多となった。

 文科省が偏在解消策

各地方が軒並み人口を減らす中、東京、埼玉、千葉、神奈川の東京圏は増加しており、一極集中がさらに進んでいることも明らかとなった。人口減を食い止めるには、東京圏への一極集中をいかに是正するかが鍵である。そのための施策を強力に推し進めていかなければ「地方消滅」に留(とど)まらず日本自体が消滅してしまいかねない。

 こうした中、文部科学省は先月末、都市部への大学生の集中を改めるため、定員を超えている私立大学に超過人数に応じて補助金を減らす等の抑制策を導入することを発表した。

 文科省によると14年度は全国の私大で約4万5000人の定員超過が生じ、うち8割が3大都市圏に集中。その一方で地方では定員割れの大学も多い。2016~18年度に補助金削減の基準を厳しくしていく方針で、学部定員を増やしたり、別の学部を新設したりなどといった「抜け道」を防ぐため、認可基準も厳しくする。国立大にも同様の措置を取る。

 抑制策を打ち出したのは、学生の偏在解消が地方創生に繋(つな)がるとの考えからだ。大都市圏への学生集中は、地方からの人口流出に直結する。昨年7月に開かれた全国知事会議でも、この点を強調する知事が少なくなかった。

 大都市圏の大学に進学した学生の多くは、就職などでそのまま住み着くケースが多い。大学入学者数が多い地域は、政府の人口動態調査でも就職年齢人口(20~24歳)が流入している地域とほぼ一致している。

 東京圏は出生率が低い。一方、地方では若い女性が大都市圏へ流出し、出生率を押し下げるという悪循環が起きている。

 大都市圏への学生集中の抑制は、一定の効果が期待できるだろう。これはこれでしっかりと進めるべきだ。しかし、あくまでも若者を地方に留めるための消極策である。地方の若者が、地元で学び、卒業後も地元で働くようにするためには、地方の大学がもっと魅力的にならなければならない。

 地方大学の活性化、それと連携した産業の振興などの施策を今後さらに進め、成果を上げていく必要がある。

 国公私立を問わず、学生たちには大都市圏とくに東京圏の大学が人気である。だが地方の大学には、特定の分野で大都市圏に負けない実力を持つ所がある。それぞれの得意分野を伸ばし、地元産業界との連携を強化して、地方創生の起爆剤となることが期待される。

 地方創生の起爆剤に

 地方への移住者は、一度東京圏で働いたことのある30代以上の人々が中心となろう。そういう人々と地元の若い人たちの交わりで生まれてくるものもあるはずだ。時代の新しい動きに敏感な若者の心を、地方大学がいかに捉えるかが問われている。

(7月10日付社説)