香港の民主化要求は止まらない


 2017年の次期香港行政長官選挙をめぐって、香港の立法会(議会)は、中国の全国人民代表大会(全人代)の決定に沿って香港政府が提出した選挙制度改革法案を反対多数で否決した。1人1票の「普通選挙」を導入するのと引き換えに、立候補をあらかじめ制限するものだったからだ。

 立候補を制限する法案

 香港の民主派は、一定数の支持があれば誰でも立候補できる仕組みを求めていた。しかし今回、中国側がその道筋を示した香港政府の「改革案」は、民主派には到底受け入れられるものではなかった。

 香港の有権者が1人1票で行政長官を選ぶというシステムの導入は大きな進歩ではある。だが、全人代常務委員会は昨年8月、親中派が多く占めるであろう「指名委員会」の過半数の同意がなければ、立候補できないとする方針を決めた。これでは中国寄りの人物しか行政長官になれない。香港の「民主主義の死」を意味するものだ。

 憲法に当たる香港基本法は、普通選挙を最終目標とする一方、候補者は幅広い層を代表する指名委が指名するとしている。だが、指名委の構成に民意はほとんど反映されないとみられ、大きな問題がある。

 現在の行政長官選は、1200人の「選挙委員会」による間接選挙だ。少数の、しかも中国寄りの選挙委よりも、約500万人の有権者が1人1票で選ぶ方が「民主的」と大多数の香港市民は考えている。しかし、法案が「ニセの普通選挙」として否決されたのも当然の成り行きであった。

 香港では昨年、学生らが79日間にわたる道路占拠を行って中国に抗議した。1984年の中英共同宣言は、97年の返還後、香港の50年間の「高度な自治」を誓約したものだ。中国がこれを守らないというのであれば厳しい国際的批判を受けることになろう。

 中国に指摘したいのは、香港は国際経済に向けて開かれた中国の窓口であるということ。さらに香港人の多様な価値観を反映させた自治にこそ香港の存在価値があり、それが繁栄への道であるということだ。

 中国の習近平国家主席は昨年末、香港の梁振英行政長官と会談した際、香港の選挙制度改革について「秩序と安定」を最優先させるよう求めた。具体的には、中国の意に沿わない民主派の立候補を封じる改革を要求したのである。

 今回、法案が否決されたことについて、中国は「(反対した議員は)香港の民主の発展を阻害した歴史的責任を負わねばならない」としている。だが、中国がいかに工作しようとも香港市民の民主化要求は止まらないだろう。

 強硬姿勢では解決しない

 今後注目されるのは、中国の香港政策がどうなるかだ。昨年発表された中国の白書は「香港の自治は中央が与えた地方事務の管理権にすぎない」と言い放っている。

 このような大上段に構えた強硬姿勢を取り続けるのであれば、香港との関係はさらにこじれ、収拾のつかない段階へと突き進むことになろう。

(6月24日付社説)