韓国MERS、日本の予防態勢は万全か


 中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が韓国で確認されてから約1カ月になるが、感染者・死亡者ともに増え続け、長期化する兆しを見せている。韓国との人的往来が活発な日本は万全の予防態勢で臨む必要がある。

 水際対策徹底の方針

 MERSは主に中東地域で感染者が発生し、重い肺炎などを引き起こす新型感染症で、ワクチンや治療薬はなく、致死率は約40%とも言われる。先月初めに中東のバーレーンから韓国に帰国した60代の男性に陽性反応が出て以降、首都ソウルをはじめとする複数の医療機関を通じて感染者が続出した。18日現在、感染者は165人に達し、死者も23人になった。

 韓国政府と一緒に現地調査した世界保健機関(WHO)によると、初感染者を風邪と誤診し、初動対応の遅れが被害を大きくした。患者が病院を転々としたり、大勢の親戚・知人らが患者を見舞っていたりしたことも感染拡大に拍車を掛けたとみられている。

 ほとんどが院内感染で、重症化する確率が高いのは糖尿病などの慢性疾患を患っている人か高齢者で、大半の感染者は回復している。一般の地域社会での感染例はまだ報告されておらず、一時は2000カ所以上に及んだ小学校などの休校数も韓国政府の呼び掛けもあって大幅に減り始めている。

 マスコミが連日伝えるMERS関連ニュースの影響で、韓国社会に不安が広がっているのは確かなようだが、一方で日常生活に大きな支障を来す事態には至っていない。日本の一部報道には「韓国はパニック状態」などとする表現も見られるが、実態を反映しないばかりか混乱を招く不適切なものだ。

 とはいえ、隣国である韓国との間で人の往来が活発な日本としては、韓国保健当局が感染終息にこぎ着けられない以上、予防の手を緩めてはならない。

 日本政府は、日本人が韓国訪問中に感染した後、帰国することを想定し、水際対策を徹底する方針を明らかにした。観光中に公共の場で感染者と接触したり、韓国の医療機関を利用したりした日本人が感染していた場合への対応が遅れれば、韓国の二の舞いになりかねない。

 韓国在住の日本人母子が自宅での隔離対象となっており、本来は出国禁止であったにもかかわらず、当局からの連絡が遅れ、日本に帰国していたことが分かった。日本の保健当局が2人の健康状態を確認した結果、感染の恐れは低いというが、他にも似たようなケースがないか再度確認しなければならない。

 韓国との航空便が発着する成田空港を抱える千葉県では、医師や市町村職員らを集め緊急対応セミナーが開かれた。感染予防に向けて啓発を強化していくことも大事だ。

 韓国と密に情報交換を

 韓国は今月末までに「MERSとの戦い」に一つの区切りを付けたいとしているが、潜伏期間が予想以上に長く、収拾のメドは立っていない。日本としてはいたずらに不安を募らせることなく、韓国との情報交換を密に行いながら冷静な予防に努めたいところだ。

(6月19日付社説)