管理体制の強化でメニュー虚偽の再発防止を


 阪急阪神ホテルズが運営する東京都や大阪府などのホテルやレストランでメニュー表示と異なる食材が使われていた。冷凍保存した魚を使っているのに「鮮魚のムニエル」と表示したり、産地が違うのにメニューに「霧島ポーク」と記載したりしていたことが判明した。

 今回のような問題が相次げば、ホテル業界全体の信用にも関わってこよう。顧客の視線で管理体制を強化し、再発を防止することが求められる。

経営者は「誤表示」と説明

 メニューの虚偽表示は阪急阪神ホテルズのほか、同じグループの高級ホテル、ザ・リッツ・カールトン大阪でも明らかになった。

 このホテルでは、レストランのメニューに搾りたてを意味する「フレッシュジュース」と表示しながら、実際は容器詰めのストレートジュースを提供。ルームサービスでは「自家製パン」として提供していたパン9種類のうち3種類が外部委託や既製品だった。

 いずれの経営者も意図したものではないと強調している。しかし、東京ディズニーリゾートのホテルやプリンスホテルでも6月、メニューと違う食材の使用が判明している。今回の問題は「氷山の一角」との見方もある。「誤表示」との説明をそのまま信じることはできない。

 顧客が支払う料金は、高級な食材に見合ったものだ。仮に経費削減などを理由にメニューより安い食材を使っていたとすれば、顧客に対する裏切りであり、責任は重い。

 食品をめぐる偽装問題では、高級料亭「吉兆」グループの船場吉兆が2007年、牛肉産地を偽装していたことが明るみに出て、その後廃業に追い込まれた。この年には、北海道の食肉加工卸会社が豚肉を混ぜたひき肉を「牛ミンチ肉」と偽装した事件や三重県の老舗和菓子店による消費期限偽装問題などが相次いだ。

 阪急阪神ホテルズの虚偽表示は7年間にわたって行われていたという。一連の偽装問題の時期と重なることになる。単なる「誤表示」だとしても、あまりにもずさんではないか。

 いずれのホテルも顧客への返金に応じるとしているが、想定額は阪急阪神ホテルズで約1億1000万円に上る。一度失われた信頼を回復するのは簡単ではない。

 ただ、今回の問題が生じた一因として、メニュー表記に関して明確な基準がないことが挙げられる。

 消費者庁によれば、小売される食品は容器や包装の表示基準が決められているが、メニュー表示にはない。再発防止のためには、現行の基準を見直す必要があろう。

 また、調理現場は職人の世界で、管理職も状況を把握できない場合が多いとされる。こうした風通しの悪さが、メニューの虚偽表示につながったとも考えられる。

ホテルはチェック徹底を

 顧客の満足を第一に考え、良質なサービスに徹するのが、ホテル経営の基本のはずだ。メニュー虚偽表示を行ったホテル以外でも、チェックを徹底しなければならない。

(10月28日付社説)