カナダ議会乱射、国際協力でテロを封じ込めよ


 カナダの首都オタワ中心部で、イスラム過激思想に共鳴していたとみられるカナダ人の男が戦没者慰霊碑を警護中の兵士を銃で撃ち殺し、連邦議会議事堂に侵入して乱射するというテロが発生した。男は議事堂内で射殺された。

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」は敵対する欧米諸国の市民殺害を呼び掛けている。今回のテロはカナダのハーパー政権がイスラム国への空爆参加を表明したことへの報復とみていいだろう。

 西側諸国で高まる脅威

 男は最近イスラム教に改宗しており、「リスクが高い人物」としてカナダ政府の監視下にあったという。ハーパー首相は「カナダは決してたじろがない」と述べ、テロ組織との戦いを強化する方針を強調した。

 カナダでは東部のモントリオール近郊でも、イスラム教に改宗した男が兵士を車ではね、殺害する事件があった。カナダはイスラム文化圏の北アフリカ地域からの移民を受け入れてきたが、この中にテロリストが交じっている可能性もある。

 イスラム国は米国などの空爆を欧米が全イスラム教徒に対して仕掛けた戦争と位置付けている。西側諸国でテロの脅威が高まっている。

 オーストラリアでは150人以上が戦闘員などとしてイスラム国に合流した後、20人以上がすでに帰国したとされている。フランスではイスラム国の戦いを「聖戦」として、計900人以上がすでに中東などに渡っていたり、渡ろうとしたりしている。このため治安当局は、イスラム国を目指すとみられる人物のリストを作り、国境を越えようとした時点で逮捕できる法案の審議を進めている。

 米国でもイスラム国に加わった米国人戦闘員らが米本土に戻ってテロを起こす事態が懸念されている。米国内では米軍とカナダ軍が共同運用する北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が警戒を強化し、不審機に対応できる態勢を固めたという。米連邦捜査局(FBI)も各支局に警戒を強めるよう指示した。

 今回のようなテロを封じ込めるには、国内の警戒とともに情報交換などで各国との協力を強化しなければならない。ケリー米国務長官は「政府中枢を狙った憎むべき邪悪な攻撃だ」と非難した上で、2001年の同時多発テロを経験した立場からカナダ政府を全面的に支援する考えを表明した。

 イスラム国はイスラムを名乗る過激組織にすぎないが、社会の現状に不満を抱く西側世界の若者たちにとっては、現状打破と改革・革新のシンボルとなっているようだ。イスラム国が「理想郷」ではなく、残虐なテロ集団であるという現実を周知徹底させることも必要である。

 日本国内の警戒も強めよ

 日本では、イスラム国に戦闘目的で加わろうとした北海道大学の学生の男(休学中)が、刑法の私戦予備および陰謀の容疑で警視庁公安部の事情聴取を受けた。

 日本は国際社会のイスラム国に対する戦いを支持している。難民や周辺国への人道支援を進めるとともに、国内でのテロへの警戒を強めるべきだ。

(10月25日付社説)