ガス供給協議、早期の円満解決を望みたい


 ロシアからウクライナへの天然ガス供給再開問題について、両国と欧州連合(EU)代表の3者協議が行われてきた。

 ロシアが6月から停止

 プーチン・ロシア大統領とポロシェンコ・ウクライナ大統領はこのほど、イタリア・ミラノで開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議を利用して約1カ月半ぶりに会談した。

 会談後、プーチン大統領は6月から止めているウクライナへのガス供給について「少なくとも来年3月31日までの冬季には、再開する条件で合意した。詳細を協議し、進展をみた」と述べた。一方、ポロシェンコ大統領は最終合意には至っていないとしながらも、ブリュッセルでの3者協議での妥結に期待感を示した。

 ロシアとウクライナの「ガス戦争」は、ウクライナ危機を背景に今年6月に再燃した。ウクライナの50億㌦以上のガス代金未払いを理由に、ロシアの国営天然ガス独占企業「ガスプロム」が代金前払い制を導入するとともに、ウクライナ向けガス供給を停止した。

 4月のロシア産ガスの大幅な値上げ(1000立方㍍当たり268・5㌦から485㌦に8割アップ)の翌月から、この問題は欧州連合(EU)の仲介により3者協議の形で話し合われてきた。

 ウクライナは消費するガスの半分をロシアに依存している。EU諸国も消費ガスの3分の1はロシア産をウクライナ経由で購入。EU向けのガスは6月以降も供給され続けているが、ロシア・ウクライナ間の交渉次第ではいつ供給が止められるか分からない。

 ウクライナ側がEU向けガスを途中で抜き取った事例もこれまでにあった。エネルギー安全保障の面からも、ウクライナへのガス供給問題は、EUにとって重大関心事である。

 9月のベルリンでの協議では、ロシアとEUが「ウクライナへの冬季パッケージ」計画を提案。ウクライナが年末までに滞納分のうち31億㌦を支払い、冬の間に少なくとも50億立方㍍を1000立方㍍当たり385㌦で供給を受ける案で話し合ったと言われる。

 ミラノでの首脳会談では、ガス代金返済について暫定的な合意に達した。ロシアのエネルギー省によれば、ウクライナ側は滞納分31億㌦のうち、10月中に14億5000万㌦を、今年末までに残り16億5000万㌦を支払うこと、冬季のガス代金を1000立方㍍当たり385㌦とすることで折り合った。

 これまでの未払い分は当初の50億㌦強と言われたが、滞納分の減額で決着したのか、差し引き19億㌦の支払いを猶予したのかは明らかでない。31億㌦の2回の分割払いに応じたことも、ロシア側の譲歩と言えよう。

 緊張緩和のためにも

 首脳会談後のブリュセルでの協議で最終決着が期待されたが、結局は29日に再度、同じくブリュッセルで協議することになり、合意文書の調印は先延ばしされた。暖房の必要な本格的な冬の到来を間近に控えており、ウクライナ東南部での緊張緩和のためにも、早期の円満解決を望みたい。

(11月24日付社説)