性犯罪の量刑、厳罰と再犯防止策が不可欠だ


 松島みどり法相は性犯罪の罰則のあり方について法務省内で早急に検討するよう指示し、罰則強化を目指す。

 性犯罪への処罰はかねて甘すぎると指摘されており、罰則強化は厳罰化というよりも適正化と言うべきものだろう。それだけでなく加害者の再犯を防ぐ仕組みも不可欠だ。

 罰則強化目指す法相

 松島法相は就任会見で性犯罪への罰則強化の必要性を訴えている。性犯罪は女性の尊厳性を破壊し、取り返しのつかない傷を与えるので「魂の殺人」とも呼ばれる。

 それにもかかわらず、法定刑は強盗致死罪が「死刑又は無期懲役」、強盗致傷罪が「無期又は6年以上の懲役」なのに対して、強姦致死傷罪は「無期又は5年以上の懲役」だ。

 それで松島法相は「物を取った罪の方が、女性の人生を狂わせるかもしれない罪よりも重いことに憤りを感じてきた」と述べている。この発言に同感する国民は多いはずだ。

 凶悪な性犯罪は絶えない。新潟地検は8月、31歳の男を強姦致死とわいせつ略取の罪で起訴した。男は昨秋、新潟県新発田市の路上を歩いていた女性(当時、22歳)を刃物で脅し、車で連れ去って性的暴行を加え、怪我を負わせて死亡させた。

 この男は別の女性3人に関しても強姦罪で起訴されている。同市内では2女性の不審死事案もある。男は否認しており、裁判での真相究明が待たれるが、こうした凶悪な性犯罪でも現行の法定刑の上限が無期懲役にとどまるのは、どう見ても罰則が適正とは言えまい。

 2011年に静岡の裁判員裁判で、強姦など9件の性犯罪を引き起こした35歳の男に懲役50年の判決が下された。異例の量刑とされたが、裁判員は「あまりにも酷い犯行で妥当な判決」と述べている。性犯罪は再犯率が高く、軽い量刑では被害を広げかねないだけに判決は国民から広く支持された。

 法務省によると、00年1~6月に出所した重大事犯者1021人のうち、性犯罪の前科のある強姦罪の出所者の38%は再び性犯罪を犯していた(10年版犯罪白書)。このため法務省は性犯罪の受刑者に対する改善プログラム指導などに取り組んでいるが、効果は限定的だ。

 こうした性犯罪の実態を見れば、法定刑の適正化だけでは不十分なことが分かる。出所後の措置も早急に検討すべきだ。海外では、フランスが仮釈放の性犯罪者に衛星利用測位システム(GPS)を装着させる累犯対策法を制定しているほか、韓国が薬物治療を行うなど厳しく対応している。

 また国内では、強姦や強制わいせつが全国ワースト1を記録した大阪府が12年、児童に対する性犯罪者が出所後に府内に住む場合、居住地の届け出を義務付ける条例を施行している。国が動かないので自治体の中には性犯罪の前歴者にGPSの携帯を義務付ける条例制定を検討したところもある。

 確固たる仕組み作りを

 松島法相には刑罰の適正化はもとより、予防策も含め「魂の殺人」を許さない確固たる仕組み作りを目指してもらいたい。

(9月29日付社説)