集団的自衛権、日米同盟強化につなげよ


 小野寺五典防衛相はヘーゲル米国防長官と米国防総省で会談し、安倍内閣が閣議決定した集団的自衛権の行使容認について説明した。

 ヘーゲル氏は歓迎を表明し、年内に改定する日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に反映させることで一致した。行使容認後、日米防衛担当閣僚が会談するのは初めてである。

 容認後初の防衛相会談

 ヘーゲル氏が指摘するように、関連法案が成立すれば、東アジア地域や世界の安全に対する日本の貢献を高める“歴史的で画期的な決定”となろう。その結果、日米同盟を新しいレベルに引き上げて強化することになり、抑止力の向上と日本の防衛強化の点で歓迎である。

 集団的自衛権について議論の的となっているのは、行使のための法整備で自衛隊の「防衛出動」の要件が緩和されることだ。自衛隊法76条は要件について「日本が武力攻撃を受けたときか、攻撃を受ける明白な危険が切迫しているとき」と定めている。この条文を閣議決定の内容に沿って改正し、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」で「国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には防衛出動として活動できることを明記する方針だ。

 メディアを中心にわが国の一部には、集団的自衛権の行使について「他国の戦争に巻き込まれる」とか「戦争への道を開くもの」と危惧する声があることは事実だ。しかし、個別的、集団的自衛権は国連でも認められた国家の権利である。

 わが国が防衛を日米安保体制に依存している現状から見て「わが国と密接な関係にある他国」とは米国のことである。どこかの国からの対米武力攻撃があれば、日本国民の生存権が根底から覆される危険が生じることは明白である。

 行使容認後初の日米防衛相会談は同盟強化の点で有意義であった。行使容認は、米国が以前から強く要求してきたものだ。知日派は「集団的自衛権の禁止は日米同盟への障害」と繰り返し強調してきた。日米安保条約では日本が攻撃された時、米国は日本を守る義務を負うが、集団的自衛権行使の禁止で米国に万一の事態が生じた場合、日本が米国防衛に動けないのでは、米国民は納得しないだろう。

 行使容認で、日米安保体制の下での日本の役割拡大を米国から求められることになろう。オバマ米政権は財政難で国防予算が削られる中で、アジア太平洋地域で海洋進出を強める中国に対抗するという困難な課題に直面しているためだ。

 ヘーゲル氏は記者会見で、日本に期待する貢献分野として、ミサイル防衛、大量破壊兵器の拡散防止、対海賊作戦、広範な軍事演習などを挙げた。

 自主防衛力向上が必要

 一方、日本側は尖閣問題などで中国との緊張が高まる中、対中抑止のために米国がアジア太平洋への関わりを続けていくことを切望している。しかし、米側には日中間の争いに巻き込まれることへの警戒感がある。

 第2次世界大戦の敗戦で経済が疲弊していた時とは違う。日米同盟強化に必要なのは日本の自主防衛力の向上だ。

(7月14日付社説)