中国にらんだ日豪連携強化を歓迎


 オーストラリアを訪問している安倍晋三首相はアボット首相と会談し、両首脳は日豪の経済連携協定(EPA)と防衛装備品の共同開発に関する協定に署名した。

 東・南シナ海への海洋進出を強める中国に対応する上で、日豪両国の連携が強化されたことを歓迎する。

 防衛装備協定に署名

 両国は2007年、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を初めて開催。その後、自衛隊と豪州軍が食料や燃料を融通し合えるようにする物品役務相互提供協定(ACSA)や、軍事機密やテロ情報などを交換するための情報保護協定も締結するなど、安全保障協力を強化してきた。

 日本は今年4月、防衛装備移転三原則を閣議決定し、武器の共同開発や輸出を大幅に緩和した。今回署名した防衛装備に関する協定は、互いに装備品の輸出をしやすくするもので、日本は同様の協定を米英両国と締結済み。豪州は日本の潜水艦技術に関心を示しており、両国はまず船舶の流体力学分野に関する共同研究を進める。

 安倍首相は価値観を共有する豪州との関係を重視しており、アボット首相は日本を「アジアの親友」と位置付ける親日家とされる。4月にアボット首相が来日した際には、国家安全保障会議(日本版NSC)の会合に招いた。外国首脳としては初めてのことだ。

 両国は共に米国の同盟国であり、日本にとって豪州は「準同盟国」とも言える存在だ。今回の会談で、両首脳はアジア太平洋地域の安定に日米豪3カ国の連携が不可欠であることを確認。中国の海洋進出を念頭に、東・南シナ海の現状を変更するいかなる試みにも反対するとの立場で一致した。

 昨年11月に中国が沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した際、豪州は米国と共にいち早く日本を支持して「威圧的な行動に反対する」(ビショップ外相)と中国を批判した。また、日本が集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を決定したことを歓迎するコメントも発表している。

 安倍首相は今回、日本の首相として初めて豪州連邦議会で演説し、集団的自衛権の行使容認について「安全保障の法的基盤を一新しようとしている。法の支配を守る秩序や、地域と世界の平和を進んでつくる一助となる国にしたい」と述べた。豪州は自衛権発動の新要件に定める「密接な関係にある他国」として想定する国だ。「積極的平和主義」への理解を広げることは欠かせない。

 一方、日豪EPAは豪州産牛肉に日本が課す関税を段階的に削減するものだ。締結が正式に合意されたことで、環太平洋連携協定(TPP)交渉の日米協議が日本に有利に進むことが期待される。

 安保協力で抑止力向上を

 安倍首相は豪州議会での演説の中で、防衛装備に関する協定について「私たちの歴史に『特別な関係』を刻む最初の一歩となる」と強調した。

 日豪、そして日米豪の安保協力を一段と強化し、中国に対する抑止力を高めるべきだ。

(7月9日付社説)