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中国の裁判所が商船差し押さえ、反日リスク回避の戦略進めよ


 中国の上海海事法院(裁判所)が、1930年代の中国貨物船賃貸料の未払いをめぐる訴訟の判決を理由に商船三井の大型船舶を差し押さえた。

 日中両国は72年に中国の戦争賠償請求放棄を明記した共同声明に調印して関係正常化したが、中国共産党の指導下にある裁判所によって突然の強制措置が取られたことで、声明の空文化を警戒すべきだ。

 共同声明の土台揺るがす

 商船三井の前身の一つである大同海運が中国の船会社・中威輸船から2隻の貨物船を借りたのは、日中戦争直前の36年。2隻の船は賃借期間中の37年に戦争が本格化して旧日本軍に徴用され、戦争中に沈没した。中威輸船の創始者の子や孫が賠償請求をしていたが、日本での訴訟は時効で却下。上海海事法院には88年に提訴され2007年に商船三井が敗訴し、10年に判決が確定したため同社は和解交渉を進めていた。

 そこへ中国の裁判所が浙江省の港で商船三井が所有する鉱石専用船を突然差し押さえた。戦争賠償請求問題をめぐって中国の裁判所がこのような強制措置を取った前例はなく、日中共同声明の土台を中国側が揺るがせた深刻な問題である。

 3月には、戦争当時に強制連行されて労働を強いられた中国人の元労働者らが、日本コークス工業(旧三井鉱山)と三菱マテリアルに賠償請求した訴訟を北京市第1中級人民法院が受理した。強制連行をめぐる訴訟を中国の裁判所が受理したのは初めてだった。この訴訟も先に日本の裁判所で起こされており、日中共同声明に基づき棄却されている。

 商船差し押さえは、このような戦争賠償請求訴訟が中国で今後も続き、原告に有利な判決が出されていく蓋然(がいぜん)性を高めたと言える。

 これらの中国の動きは、沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返し、東シナ海に一方的に防空識別圏を設定するなど反日攻勢を強めていることと連動しているとみることができる。習近平国家主席は3月、ドイツで行った演説の中で日本との戦争で「3500万人」の死傷者が出たと述べるなど反日宣伝を強化。結局中止となったものの、4月下旬に予定していた国際観艦式に日本だけ招待しないなど日本の孤立化を狙った露骨な動きに出ている。

 日本は戦後、連合国による占領期間を経てサンフランシスコ講和条約の発効とともに国際社会に復帰した。しかし、中国は戦争をめぐる対日批判に余念がない。中国は「輿論戦」「心理戦」「法律戦」の三戦を軍の政治工作として進めており、戦争賠償請求問題もその一環と考えざるを得ない。

国際司法裁へ提訴検討を

 我が国は戦後一貫して平和主義を貫いてきた実績を繰り返し主張していく必要があろう。同時に中国に対して日中共同声明の尊重を求めるとともに、国際司法裁判所への提訴も検討する必要がある。

 さらに反日リスクを回避するために中国の三戦に勝る戦略を練り、揺るぎない互恵的関係を築き得る諸国との関係強化を優先していくべきである。

(4月24日付社説)