ウクライナ情勢、4者合意履行で緊張緩和を


 ウクライナ情勢が混迷する中、米露、ウクライナ、欧州連合(EU)の外相級4者協議がジュネーブで開かれ、危機脱出の方策について合意した。合意履行によって緊張を緩和すべきである。

 親露派と武装勢力が衝突

 合意の3日後にはウクライナ東部ドネツク州スラビャンスクで親ロシア派が設置した検問所を武装集団が襲撃、応戦した親ロシア側3人が死亡、3人が負傷するという事件が起きた。武装集団側にも死傷者が出たと言われる。

 4者合意後、初めての武力衝突だ。ウクライナとロシアは互いに相手に責任を押し付ける非難合戦を展開している。

 ジュネーブ協議では①ウクライナのすべての違法な武装集団の武装解除②建物や公共空間からの違法占拠者の排除③重要犯罪を除く抗議運動参加者の恩赦④すべての都市で占拠された広場、道路など公共の場所すべての解放⑤ウクライナの早急な『国民対話』の支持⑥地方分権の拡大を含む憲法改正の支持⑦2国間などの枠組みで協議の継続―などで合意した。

 だが肝心の武装解除に関しては、ウクライナ東部とも西部とも、具体的な地域は明記されていない。つまり、東部各地で行政府建物を占拠している親露集団はもちろん、キエフのユーロマイダン(広場)に武装して陣取る極右過激派の「右派セクター」もその対象となるが、双方とも、武装解除に応じる気配はない。4者合意後の大きな不安材料だ。

 合意に従って、合意事項の履行状況を確認する役割を担う欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視団のエザリントン副団長らが早速ウクライナ東部に到着。ドネツク郊外のゴルロフカ警察署を占拠している親露派住民グループ幹部と話し合い、事態打開を図ったが、幹部は暫定政権の退陣を求めるなど、無条件での退去には応じない構えを崩さなかったと伝えられる。

 ジュネーブ協議に出席したケリー米国務長官は協議終了直後、ロシアがウクライナをめぐる緊張緩和に向け数日以内に措置をとらなければ、米国はロシアに対する追加制裁を発動する可能性があると発言した。

 ロシアはまず、ウクライナ国境付近の軍を撤退させ、ウクライナ国内の対立を激化させるような言動を控えるべきだ。ウクライナ暫定政権も過激派の動きを抑える必要がある。

 ウクライナ危機に関しては、同国経済の早急な立て直しも喫緊の重要課題である。長年の経済停滞で、同国の国内総生産(GDP)は1990年比で7割以下の状態であり、しかもGDPの8割にあたる1400億㌦もの対外債務を抱えている。

 財政支援が不可欠だ

 さらに、ロシア独占企業ガスプロムに対してウクライナは22億㌦(約2200億円)ものガス料金を滞納しているという。ロシアはウクライナが滞納額を返済しなければ、特別割引価格の適用をなくすほか、前払い方式に切り替えると脅しをかけている。

 情勢安定化には、国際社会のウクライナに対する財政支援も不可欠だ。

(4月23日付社説)