温暖化報告、各国は危機感共有し連携を


 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第3作業部会が、温室効果ガスの排出削減に向けた報告書を公表した。地球温暖化の深刻な影響を回避するため、各国が危機感を共有し、連携して対策に取り組むべきだ。

 低炭素エネを8割に

 報告書は、18世紀半ばの産業革命前と比較した世界の平均気温の上昇を2度未満に抑制するとの国際目標を達成するため、温室ガス排出量を2050年に10年比で40~70%削減し、今世紀末にはほぼゼロか、大気中から回収してマイナスにする必要性を明記した。

 具体的手段としては、再生可能エネルギーや原子力など「低炭素エネルギー」の電力供給に占める比率を、現在の約30%から50年までに80%以上に引き上げることを挙げた。このほか、排ガスから二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地下深くに貯留する技術(CCS)が備わっていない火力発電所を段階的に廃止する必要があるとした。

 温暖化の影響に関しては、先月に横浜市で開催された第2作業部会の報告書で「20世紀末より気温が2度上昇すると主要穀物の生産量が減り、4度の上昇では世界全体で食料供給に大きな影響が出る」などと深刻な事態を予測している。

 IPCCのパチャウリ議長は「国際協力がかつてないレベルで必要だ」と強調した。来年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、温室ガス削減のための新たな枠組みを決めることになっている。今までは先進国に重い負担を求める途上国と反発する先進国の対立が目立ったが、温暖化の影響は全世界に及ぶ。各国が連携し、実効性のある対策を講じなければならない。

 日本政府は日本の環境技術と途上国の温室ガス排出枠を交換する「2国間オフセット・クレジット制度」の導入を進めている。優れた技術を生かして削減に貢献することが求められる。

 しかし昨年、20年までの削減目標を「05年比3・8%減」に見直すと表明。これは1990年比では3%増となる計算で、国際社会から批判を浴びた。

 東京電力福島第1原発事故以降、CO2を排出しない原発の運転状況が見通せないことを踏まえたものだが、日本の温暖化対策の取り組みが後退したと受け止められても仕方がない。今後、安全性が確認された原発の再稼働を着実に進め、より高い削減目標を設定すべきだ。

 温暖化対策における原発の重要性は、環境省が発表した08~12年度の日本の温室ガス排出量の確定値を見ても分かる。90年度比で平均8・4%減となり、先進国に削減義務を課した「京都議定書」の目標(平均6%減)を達成したものの、原発が運転停止した12年度は森林吸収分などを反映させる前の単純排出量が6・5%増の13億4300万㌧に達した。

 原発めぐる懸案解決を

 報告書は原子力について「温室ガス排出の少ないベースロード電源だが、さまざまなリスクがある」と指摘した。高レベル放射性廃棄物の最終処分に道筋を付けるなど懸案を解決する必要がある。

(4月18日付社説)