地球の将来見据え温暖化対策急げ


 地球温暖化がこのまま進めば、貧困などを助長し、内戦など暴力的な衝突拡大につながり、国家間の緊張が高まる―。

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表した報告書は、温暖化が社会や生態系に与える影響は、平和そして人間の生存を脅かすものであると予測・警告した。

 影響受けない人はいない

 2007年に公表した前回報告書では「温暖化の影響を受けつつある」としていたが、今回は「温暖化は世界中の大陸と海洋で生態系や人間社会に影響を及ぼしている」と踏み込んでいる。科学的知見に基づいての予測であり、報告の内容は温暖化の影響が極めて深刻であることを示すものだ。

 IPCCのパチャウリ議長は「(温暖化の)影響を受けない人はいない」として、早急な対策の重要性を強調した。温室効果ガスの削減と、被害を軽減する適応策が喫緊の課題だ。

報告書は、穀物生産量への温暖化の悪影響はプラス面よりも大きいと結論付けている。近年起きた食料価格の高騰について、主要な食料生産地を襲った旱魃(かんばつ)、洪水などの異常気象が主な要因と分析。20世紀末より気温が2度上昇すると、温帯、熱帯地域で小麦、コメなどの生産量が減少し、4度以上上昇すると世界的な食料危機を招きかねないとしている。

IPCCは、昨年9月に公表した第1作業部会の報告書で、このまま温室ガスの排出量が増えれば、今世紀末までに平均気温が現在より最大4・8度上昇すると予測している。

 今回の報告書では、温暖化で熱帯の水産資源が温帯に移動するため、熱帯の海での資源量が減少し、資源の争奪につながるとしている。このような海水温の上昇による生態系の変化の兆候は、日本の近海においても近年顕著になってきている。

 もっと深刻なのは、人間の経済活動や生きていく上で欠かせない水資源の減少だ。報告書は減少に伴い、工業や農業の分野間で争奪が激しくなると予測している。経済活動全般への影響としては「気温の2度までの上昇により、世界全体の収入に対して0・2~2・0%の損失が生じることが予想される」との見通しを示した。

 報告書は、こういう状況が「内戦などの暴力的な衝突の危険性を間接的に高める可能性がある」とし、人々の移住を増加させるとも指摘した。当然、国家間の緊張が高まることにもつながろう。

 温暖化対策のネックの一つとなっている、先進国と途上国の対立は今会議でも表面化した。先進国の反対で、温暖化による途上国のコストを明記した原案から具体的数字は削除された。

 対立解消へ発想の転換を

 温室ガス削減のための新たな枠組みを来年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で決めることになっている。実効性のある枠組みへの合意に向け、先進国と途上国の対立を早く解消しなければならない。双方とも地球の将来を見据え、国益だけにとらわれない発想への転換が必要だ。温暖化の影響は、先進国、途上国の別なく確実に及んでくる。