武器輸出新原則、友好国との共同開発進めよ


 政府がこれまで武器、関連技術の輸出を事実上禁止していた「武器輸出三原則」を改め、「新三原則」を決めた。概ね妥当な内容である。

 「積極的平和主義」を推進するためのソフトパワーとして活用できるとともに、危機的状況にあるわが国の防衛産業の立て直しにも大きく貢献するからである。

非常に高価な日本製

 新三原則は①国際的な平和や安全の維持を妨げることが明らかな場合は移転しない②移転を認める場合を限定し、厳格に審査し、情報公開を図る③目的外使用や第三国への移転は適正管理が確保される場合に限定する-との内容だ。

 わが国では、これまで「総合安全保障」の名の下に「軍事力でなく経済力を活用して日本の安全を確保すべき」との主張が有力だった。最近はソフトパワー活用論を唱える向きが増えている。ところが、経済力、情報管理能力などのソフトパワーをどのように生かすかについての具体論は皆無に等しい。

 このため、武器輸出、経済援助などの安全確保への活用論が出ると否定されてきた。情報管理能力や、その強化・活用についても無関心だった。いわゆる歴史解釈問題や捕鯨問題で後れを取ったのは、このためである。

 一方、わが国は冷戦下で、旧3原則によって同盟国や友好国に武器および関連技術の輸出を事実上禁じていた。だが現実には、中ソ両国や北朝鮮など共産国には武器関連部品、技術がかなり流出していた。

 東芝機械が高性能数値制御(NC)工作機を、旧3原則のみならず対共産圈輸出統制委員会(ココム)の規制にも反してソ連に輸出していたのはその代表例だ。また、北朝鮮の弾道ミサイルや小型潜水艦に、日本製部品が数多く使われているのは周知の事実である。

 今後とも、わが国の安全に悪影響を与えるような武器、関連技術の敵対国家への輸出は、厳重に取り締まることが非常に重要である。半面、同盟国、友好国との武器技術の共同開発には今まで以上に力を入れる必要がある。

 それとともに、シーレーン(海上交通路)である南シナ海・インド洋沿岸の友好国には、積極的に輸出すべきである。軍事力自体は戦争の原因にはならないが、各国間の極端な軍事面でのアンバランスは、他に政治的原因があった場合には、武力紛争を引き起こす。中国と南シナ海、インド洋沿岸の友好国とは、軍事面での格差が質量ともに極めて大きいことに留意すべきである。

 菅義偉官房長官は「新たな原則の下、装備品の活用による平和貢献、国際協力に一層積極的に関与するとともに、共同開発・生産に参画していく」と述べた。着実な取り組みが求められよう。

防衛産業立て直しに貢献

 もっとも、現状では日本製武器は国際価格に比べて非常に高価であり、国際競争力は極めて低い。武器輸出の促進は、日本の防衛産業の立て直しに資するところ大である。これによって日本防衛における継戦能力も向上する。